ボランティア活動履歴から見つけるサポーターの「貢献意欲」:データ分析で深めるボランティアとの関係
はじめに:ボランティア活動履歴に眠る価値
非営利団体にとって、ボランティアの皆様は活動を支える大切なサポーターです。多くの団体では、ボランティアの皆様の氏名や連絡先、そして「いつ」「どのような活動に参加したか」といった活動履歴を記録されていることと思います。
この活動履歴データは、単なる記録として保管するだけでなく、分析することでボランティアの皆様の団体への関心度合いや貢献意欲、得意とする分野、活動傾向といった多くの示唆を与えてくれます。これらの情報を読み解くことは、ボランティアの皆様との関係性をより深く理解し、それぞれの貢献意欲に応じた適切なコミュニケーションや機会を提供するために非常に有効です。
「活動履歴データはあるけれど、どのように活用すれば良いか分からない」と感じている担当者の方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、手元にあるボランティア活動履歴データを活用して、ボランティアの皆様の「貢献意欲」を読み解き、関係性を強化するための具体的なデータ分析の手順と、そこから導き出されるアクションについて解説します。
ボランティア活動履歴からどのようなことがわかるのか
ボランティア活動履歴のデータを分析することで、主に以下のような情報を得ることができます。
- 活動頻度と継続性: 累計の参加回数や、どのくらいの期間にわたって活動しているかを知ることで、団体へのロイヤリティ(愛着や貢献意欲)の高さがわかります。活動が途切れてしまっている方や、特定の時期だけ活動する方の傾向も把握できます。
- 関心の方向性: どのようなプログラムやイベントに多く参加しているかを見ることで、ボランティアの皆様がどのような団体の活動に関心を持っているか、どのような役割に魅力を感じているかがわかります。
- 貢献意欲の変化: 活動を開始した時期から現在までの活動頻度の推移を見ることで、貢献意欲が高まっているのか、あるいは低下傾向にあるのかといった変化を察知できます。
- 特定の活動への適性: ある特定の活動や役割に継続的に参加している方がいれば、その活動に特別なスキルや関心を持っている可能性が考えられます。
これらの情報は、ボランティア募集の方法を改善したり、個々のボランティアの方に合わせた声かけや役割提供を行ったりする上で非常に役立ちます。
ボランティア活動履歴データの分析ステップ
ここでは、Excelなどの一般的なツールを使ってできる基本的な分析ステップをご紹介します。
ステップ1:必要なデータを整理する
まずは分析に必要なデータを集めます。最低限、以下の項目を含むリスト形式のデータがあると分析しやすいです。
- ボランティアの氏名(またはID)
- 活動に参加した日付
- 活動の種類やプログラム名
- 可能であれば、活動時間や役割
データが複数のファイルに分かれている場合は、一つのシートにまとめると扱いやすくなります。重複データや入力ミスがないか、簡単な確認も行いましょう。
ステップ2:基本的な集計を行う
整理したデータを使って、ボランティアごとの活動状況を集計します。
- 一人あたりの累計活動回数: 各ボランティアが全期間で何回活動に参加したかをカウントします。
- プログラム別の参加回数: 各プログラムや活動の種類に対して、延べ何回の参加があったか、また各ボランティアがそれぞれどのプログラムに何回参加したかをカウントします。
- 活動開始時期と最終活動日: 各ボランティアの最初の活動日と最後の活動日を記録します。活動期間の長さや、最近活動しているかどうかがわかります。
Excelの「COUNTIF関数」や「ピボットテーブル」を使うと、これらの集計を効率的に行うことができます。
ステップ3:集計結果を可視化・分類する
集計したデータを見て、全体の傾向や個々の特徴を掴みます。
- 活動回数での分類: 累計活動回数が多い順に並べ替えたり、「10回以上活動している人」「5回未満の人」といった具合に活動頻度でボランティアを分類します。
- プログラム参加状況の可視化: どのプログラムへの参加が多いか、グラフなどで可視化すると傾向が掴みやすいです。
- 活動期間での分類: 活動期間が長いボランティア、最近活動を始めたボランティア、しばらく活動していないボランティアなどに分類します。
ステップ4:分析結果を解釈する
集計・分類した結果から、具体的な示唆を読み解きます。
- 活動頻度が高い層: この層は団体への貢献意欲が高いと考えられます。どのようなプログラムに多く参加しているか、活動期間はどのくらいか、といった特徴をさらに深く見てみましょう。
- 特定のプログラムに集中している層: なぜその活動に関心を持っているのか、他の活動への関心はあるのか、といった疑問を持ってデータを見てみましょう。
- 活動が減少・停止している層: 最終活動日から時間が経過しているボランティアや、以前より活動頻度が減っているボランティアは、「離脱予備軍」かもしれません。最終活動日の直前の活動内容や、活動が減り始めた時期に何か団体の活動で変化があったかなどを照らし合わせてみると、原因のヒントが見つかることがあります。
- 新規のボランティア層: 最近活動を始めたボランティアが、どのような活動に最初に参加する傾向があるかを見ることで、新規ボランティアが団体に馴染みやすい活動のヒントが得られます。
分析結果に基づく具体的なアクション
分析で得られた示唆は、ボランティアの皆様との関係性を深め、さらなる貢献を引き出すための具体的なアクションへと繋がります。
アクション例1:ボランティアごとの感謝とコミュニケーションの最適化
- 高頻度活動者へ: 感謝のメッセージに加え、活動内容に関する具体的なフィードバックを伝えたり、新しい役割や少し責任のあるポジション(例:リーダー補助)を打診したりすることで、さらなる貢献意欲に応えることができます。年間の活動回数に応じた感謝状や小さな記念品を贈ることも有効です。
- 特定のプログラム専門参加者へ: そのプログラムに関する最新情報や、関連する他の活動の情報を提供する際に、その方の関心に触れる一言を添えると、より響くコミュニケーションになります。
- 活動が減少・停止している方へ: 久しぶりの活動案内を送る際に、「以前〇〇の活動にご参加いただきありがとうございました」といった過去の活動に触れるメッセージを添えたり、活動に関する簡単なアンケートで近況や今後の意向を尋ねてみたりするのも一つの方法です。
アクション例2:活動プログラムの改善・開発
- 人気のある活動: 参加者の多い活動は、多くのボランティアが魅力を感じている活動です。なぜ人気なのかを分析し、その要素を他の活動に取り入れたり、関連する新しい活動を企画したりすることを検討できます。
- 参加者が少ない活動: 参加者が少ない活動は、内容が知られていない、参加しにくいといった課題があるかもしれません。参加者の分析結果(例:特定の層しか参加していない)と照らし合わせ、広報方法を見直したり、活動内容を改善したりする必要があるか検討します。
- 新規ボランティアの「最初のステップ」: 新規の方が最初に参加しやすい傾向にある活動を把握し、説明会で優先的に紹介したり、その活動の受け入れ体制を強化したりすることで、新規ボランティアが活動を始めやすくなります。
アクション例3:役割提供やスキルアップ支援
- 特定の活動に継続的に参加しているボランティアに対して、その活動に関する研修の機会を提供したり、他のボランティアのサポート役を担ってもらったりするなど、さらにスキルや経験を活かせる役割を提案します。
これらのアクションは、分析結果から得られた個々のボランティアの関心や貢献意欲の度合いに合わせて行うことが重要です。データを活用することで、画一的な対応ではなく、一人ひとりに寄り添った関係構築が可能になります。
まとめ:データはボランティアとの関係を深める羅針盤
ボランティア活動履歴データは、単なる過去の記録ではなく、ボランティアの皆様の団体への「貢献意欲」や「関心」を示す貴重な情報源です。この記事でご紹介した基本的な分析手法は、Excelなどの身近なツールで実践可能です。
活動回数や参加プログラムといった客観的なデータを分析することで、ボランティアの皆様がどのような団体との関わり方を求めているのか、どのような点に関心があるのかといった示唆を得ることができます。そして、この分析結果に基づき、感謝の伝え方や情報提供の方法、役割提供の機会などを最適化していくことが、ボランティアの皆様との関係性をより一層深め、団体活動全体の活性化に繋がります。
ぜひ、手元にあるボランティア活動履歴データを活用し、大切なサポーターであるボランティアの皆様とのより良い関係構築に役立ててください。