時系列データで読み解くサポーターの「次なる一歩」:過去の活動パターンから関係性深化のヒントを見つける
蓄積されたデータ、時系列で見ていますか?
非営利団体で日々のサポーター対応や関係構築に取り組む中で、寄付履歴、イベント参加履歴、メールの開封・クリック履歴、Webサイトの訪問データなど、多くの活動データが手元に蓄積されているかと思います。これらのデータは、現在のサポーターとの関係性を把握する上で非常に役立ちますが、さらに一歩進んで「時系列」で分析することで、サポーター一人ひとりの関心の変化や、次にどのような形で団体に関わってくれそうかという「次なる一歩」のヒントが見えてくることがあります。
例えば、初めて寄付をしてくれた方が、その数ヶ月後に特定のイベントに参加するケース。あるいは、長年ボランティアとして活動してくれた方が、あるタイミングで定期寄付を始めるケースなど、サポーターの関わり方は固定されたものではなく、時間の経過と共に変化していきます。この変化のパターンをデータから読み解くことができれば、より効果的なコミュニケーションや、サポーターが求めるであろう機会を提供できるようになります。
この記事では、手元にあるデータを使って、サポーターの過去の活動を時系列で分析し、「次なる一歩」の可能性を見つけ、関係性深化につなげるための具体的な考え方と手順をご紹介します。
なぜ時系列分析がサポーター活性化に重要なのか?
サポーターの関心やモチベーションは常に変動しています。特定のプロジェクトに関心を持ったり、団体の課題解決への貢献意欲が高まったり、自身のライフスタイルや状況の変化によって団体への関わり方を変えたりします。
単発的なデータ分析だけでは、ある一時点でのサポーターの状態しか捉えられません。しかし、時系列でデータを追うことで、サポーターが「いつ、何をきっかけに」「どのような活動から、どのような活動へと移行したか」といった変化のプロセスを把握できます。このプロセスを理解することは、以下のような点でサポーター活性化に役立ちます。
- 隠れた関心事の発見: 特定のテーマに関するメールを継続的に開けているなど、明示的な意思表示ではないがデータに表れている関心に気づけます。
- 次のステップへの予測: 特定の活動(例:入門イベント参加)の後に、次の段階の活動(例:専門プログラム参加、ボランティア登録)に進む傾向が見られるサポーター群を特定できます。
- 最適なタイミングでのコミュニケーション: サポーターの関心が高まっているであろうタイミングで、関連情報や次のアクションを促す情報を提供できます。
- 離脱の兆候の早期発見: 過去に活発だったサポーターの活動頻度が低下しているパターンを見つけ、関係維持のためのアプローチを検討できます。
このように、時系列分析は、サポーターの過去から現在への軌跡を理解し、未来の関わり方を予測するための重要な手がかりを提供します。
手元にあるデータで始める時系列分析のステップ
特別なツールや高度な知識がなくても、手元にあるExcelなどのツールとデータを活用して、サポーターの時系列分析を始めることができます。
ステップ1:分析対象とするサポーターとデータ項目を決める
まずは、どのようなサポーター群の「次なる一歩」を見つけたいかを考えます。例えば、「新規で寄付をしてくれた方」「特定のイベントに参加した方」「ボランティア登録をした方」など、分析の入り口となるサポーター群を絞り込みます。
次に、そのサポーター群のどのような活動データを時系列で追うかを決めます。手元にあるデータの中から、活動内容と「日付」の情報が含まれている項目を選びます。
利用できるデータの例: * 寄付履歴: 寄付日、寄付金額、種別(単発/定期など)、使途 * イベント・セミナー参加履歴: 参加日、イベント名、テーマ * ボランティア活動履歴: 活動日、活動内容 * メール・DM反応履歴: 送信日、開封日、クリック日、クリックしたリンク先テーマ * Webサイト訪問履歴: 訪問日、閲覧ページ(特定のプロジェクト、活動紹介、参加方法など) * アンケート回答履歴: 回答日、回答内容(関心分野、参加意欲など) * SNSでの反応履歴: 反応日、投稿内容、コメントなど(データ収集が難しい場合もあります)
これらのデータが、サポーターごとに紐づけられ、活動日時の情報が含まれていることが重要です。
ステップ2:個別のサポーターの活動履歴をリストアップする
分析対象に選んだサポーター数名から、ステップ1で選んだデータ項目を時系列に並べてリストアップしてみましょう。
例えば、以下のようなイメージです。(Excelなどで整理することを想定)
| サポーターID | 活動日 | 活動内容(例) | 詳細(例) | | :----------- | :--------- | :--------------------------------------------- | :----------------------- | | Supporter A | 2023/04/15 | 新規単発寄付 | 5,000円 | | Supporter A | 2023/05/01 | メール開封 | プロジェクトA進捗報告 | | Supporter A | 2023/06/10 | Webサイト訪問 | ボランティア募集ページ | | Supporter A | 2023/07/20 | イベント参加 | ボランティア説明会 | | Supporter B | 2023/05/25 | 特定テーマのブログ記事をSNSでシェア | 投稿内容:〜について | | Supporter B | 2023/06/05 | Webサイト訪問 | 寄付ページ | | Supporter B | 2023/06/15 | 新規定期寄付登録 | 3,000円/月 | | Supporter C | 2023/07/01 | ボランティア登録 | 月1回活動希望 | | Supporter C | 2023/07/10 | ボランティア活動(イベント補助) | イベント名:〇〇 | | Supporter C | 2023/08/05 | メール開封・クリック | ボランティア募集に関する案内 | | Supporter C | 2023/08/20 | Webサイト訪問 | 別テーマのボランティア募集 |
このように、個別のサポーターの活動の「流れ」を可視化します。
ステップ3:共通の「活動パターン」を探す
複数のサポーターの時系列データを見ていく中で、「ある活動の後に別の活動をする」といった共通のパターンや傾向が見られないかを探します。
探すべきパターンの例: * 初期活動から次の活動への移行: 新規寄付後にイベントに参加する、無料セミナー参加後に有料会員になるなど。 * 情報収集から行動への移行: 特定のテーマに関する情報(メール、Webサイト)を継続的に閲覧した後、関連イベントに参加したり、寄付をしたりする。 * 関わり方の変化: 単発寄付から定期寄付へ、ボランティアから寄付へと、より深く、あるいは異なる形で関わるようになる。 * 特定のイベント・キャンペーン後の行動: イベント参加後、関連情報への関心が高まるか、具体的な行動(寄付、ボランティア応募など)に繋がるか。
これらのパターンを見つける際には、活動と活動の間の期間(日数や月数)も合わせて確認すると、より具体的な「次なる一歩」のタイミングが見えてくることがあります。例えば、「初回寄付から3ヶ月以内にイベント参加の傾向がある」といった発見です。
また、ポジティブな「次なる一歩」だけでなく、活動頻度の低下や特定の情報への無反応といった「離脱の兆候」のパターンも合わせて探すことができます。
ステップ4:発見したパターンに基づいてサポーターをグループ化し、アクションを検討する
ステップ3で見つけた活動パターンに基づいて、サポーターをいくつかのグループに分類します。
例えば: * 「新規寄付後、イベント参加に繋がりやすいパターンを示すグループ」 * 「特定のテーマに関心を持ち、関連情報への反応率が高いグループ」 * 「ボランティア活動後、定期寄付への関心が高まる可能性のあるグループ」
グループごとに、彼らの「次なる一歩」を後押しするために、どのような情報提供や機会提供が有効かを検討します。
アクションの例: * 「新規寄付後、イベント参加に繋がりやすいグループ」には、今後のイベントスケジュールや、イベントに参加するメリットを具体的に伝えるメールを優先的に配信する。 * 「特定のテーマに関心を持つグループ」には、そのテーマに関する最新情報や、関連する活動への参加方法(寄付、ボランティアなど)を分かりやすく案内するコンテンツを提供する。 * 「ボランティア活動後、定期寄付への関心が高まる可能性のあるグループ」には、ボランティア活動への感謝を伝えつつ、活動を支えるための継続的な応援(定期寄付など)の重要性や具体的な方法を伝える。
分析を実践するためのヒント
- スモールスタートで始める: 全てのサポーターや全てのデータを一度に分析しようとせず、まずは特定のサポーター群(例:過去1年間に新規で寄付をした方100名)に絞って分析を始めてみましょう。
- 完璧を目指さない: データが全て揃っていなくても問題ありません。手元にあるデータの中から、分析に使えそうなものを活用することから始めましょう。
- 仮説を持つ: 分析を始める前に、「〇〇という活動をした人は、次に△△をする傾向があるのではないか?」といった仮説を立てておくと、分析の方向性が定まりやすくなります。
- 他の担当者と共有する: 見つけたパターンや仮説をチーム内で共有し、多様な視点から議論することで、より効果的なアクションに繋げることができます。
- 試してみて検証する: 分析結果に基づいたアクションを実施したら、その結果(例:特定のメールからのイベント申し込み率など)を測定し、分析が有効だったかを検証します。
まとめ
サポーターの過去の活動データを時系列で分析することは、一人ひとりのサポーターが時間と共にどのように変化し、次にどのような関わり方をしようとしているのか、その「次なる一歩」を読み解くための強力なアプローチです。
手元にあるデータと一般的なツールを活用し、まずは少数のサポーターからでも時系列分析を始めてみてください。サポーターの活動パターンの変化を捉えることで、彼らが本当に求めているであろう情報や機会を、最適なタイミングで提供できるようになり、サポーターとの関係性をより一層深めることにつながるはずです。
この分析を通じて発見した知見は、新しいコミュニケーション戦略の立案や、サポーターへの効果的なアプローチ方法を考える上で、必ず役立つでしょう。ぜひ、今日の業務からサポーターのデータを「流れ」として見る視点を取り入れてみてください。