手元にあるサポーターデータを最大限に活かす:関係性を深める分析視点の見つけ方
非営利活動を行う多くの団体様には、活動を応援してくださるサポーターの方々の様々なデータがあるかと思います。寄付履歴、イベント参加履歴、会員情報、メールの開封・クリック履歴、Webサイトの閲覧データなど、その種類は多岐にわたります。
しかし、「データはたくさんあるけれど、これをどう使えばサポーターの方々との関係性を深め、コミュニティを活性化できるのだろうか」と悩まれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。単にデータを眺めるだけでなく、そこから具体的なアクションに繋がる「何か」を見つけ出したい。そのために必要なのが、データを見る「分析視点」を持つことです。
なぜ「分析視点」が重要なのか?
データはそれ自体が何かを教えてくれるわけではありません。データに「どのような視点から」「どのような問いをもって」向き合うかによって、そこから得られるインサイトは大きく変わります。
例えば、単に「寄付額の合計」を見るだけでは、団体の収益状況はわかりますが、サポーターの方々との関係性についてはほとんど何もわかりません。しかし、「継続して寄付をしてくださっている方の割合」や「初めての寄付から2回目の寄付までの期間」といった視点でデータを見ることで、サポーターの方々の定着状況や、関係性が深まるタイミングのヒントが見えてきます。
このように、適切な分析視点を持つことは、データから意味のある情報(インサイト)を引き出し、次の具体的な行動を決定するための羅針盤となります。
手元データで試せる具体的な分析視点
では、具体的にどのような分析視点があるのでしょうか。ここでは、多くの団体様が手元にお持ちであろう基本的なデータを使って実践できる分析視点をいくつかご紹介します。これらの視点は、Excelなどの身近なツールでも十分に試すことができます。
1. 基本的な属性と行動の組み合わせ
サポーターの方々の基本的な属性(年代、地域、入会時期など)と特定の行動(寄付、イベント参加、メールの開封など)を組み合わせて分析することで、特定の層の傾向を把握できます。
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例1:地域別の寄付傾向
- 視点: 特定の地域(例:団体の活動拠点周辺、災害支援を行った地域など)のサポーターは、他の地域のサポーターと比べて寄付額や寄付頻度に違いがあるか?
- 得られるインサイト: 特定の地域に根ざした活動が、その地域のサポーターのエンゲージメントに繋がっているか、あるいは地域性を考慮したコミュニケーションが不足しているかなどが推測できます。
- 活用例: 特定地域向けの情報発信を強化する、地域限定の小規模イベントを企画するなど。
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例2:年代別のイベント参加率
- 視点: 特定の年代層は、どのような種類のイベント(オンライン講演会、ボランティア活動、交流会など)に参加しやすいか?
- 得られるインサイト: イベント企画の際に、どの年代層に響くコンテンツや形式か、イベント告知の方法は適切かなどを考えるヒントになります。
- 活用例: 若年層向けのオンラインイベント企画、高齢層向けの参加しやすいオフラインイベント企画など。
2. 行動パターンと継続性の関連
サポーターの方々の特定の行動(初めての行動、継続的な行動)が、その後の関係性の深まりや継続にどう影響するかを見る視点です。
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例1:最初の行動と継続寄付率
- 視点: 新規サポーターが最初に取った行動(例:Webサイトからの少額寄付、イベント参加、資料請求など)によって、その後の継続寄付率に違いがあるか?
- 得られるインサイト: 関係性深化の「良いスタート」となる最初の行動は何か、を特定できます。
- 活用例: 新規サポーターへのアプローチで、特定のアクションを促すコミュニケーション(例:「まずは〇〇な方法で気軽に支援」を推奨)を強化する。
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例2:複数チャネルでの関わりとエンゲージメント
- 視点: メールを開封し、かつWebサイトも頻繁に閲覧しているサポーターは、そうでないサポーターと比べてイベント参加率や寄付頻度が高いか?
- 得られるインサイト: 複数の形で関わってくださるサポーターほどエンゲージメントが高い、という仮説を検証できます。
- 活用例: 特定のチャネルだけでなく、様々な形で関わることの楽しさや重要性を伝えるコミュニケーションを意識する。
3. 時系列での変化を見る
時間の経過とともにサポーターの方々の行動がどのように変化するかを見る視点です。
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例1:寄付履歴から見る定着・ステップアップ
- 視点: 初めて寄付をしてから1年後、3年後、5年後…と、どれくらいのサポーターが継続してくださっているか? また、単発寄付から継続寄付へ移行した方の割合は?
- 得られるインサイト: サポーターが定着しやすいタイミングや、継続的な応援につながる節目が見えてきます。
- 活用例: 初回寄付後〇ヶ月のフォローアップ強化、継続年数に応じた感謝の伝え方や特別な情報の提供など。
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例2:特定プログラム参加後の行動変化
- 視点: 特定のボランティアプログラムやワークショップに参加した方が、その後、他の活動(寄付、イベント参加など)にどれくらい関わっているか?
- 得られるインサイト: 特定の活動への参加が、サポーターのエンゲージメントを高めるきっかけになっているか、あるいはその後のフォローアップが不足しているかなどを把握できます。
- 活用例: プログラム終了後の参加者向け特別メール、関連性の高い他の活動への誘いなど。
分析結果を解釈し、アクションに繋げるステップ
データ分析で特定の傾向が見えてきたら、次はそれをどのように解釈し、具体的なアクションに繋げるかを考えます。
- 発見した傾向を言葉にする: 分析結果から見えてきた「〇〇な属性のサポーターは、△△な行動を取りやすい」といった傾向を具体的に記述します。
- なぜそのような傾向があるか仮説を立てる: その傾向が生まれる背景には何があるのか、サポーターの方々の状況や気持ちを推測します。例えば、「特定の地域の寄付者が多いのは、その地域の課題解決に取り組んでいるからかもしれない」「特定のイベント参加者がその後のエンゲージメントが高いのは、そこで活動の意義を深く理解できたからかもしれない」など。
- 仮説に基づき具体的なアクションを検討する: その仮説が正しいとすれば、どのようなコミュニケーションや活動をすれば、その層のサポーターとの関係性をさらに深められるかを考えます。
- 小さく試して効果を検証する: 検討したアクションプランを、まずは対象となる一部のサポーターや小規模な施策で試してみます。そして、その結果を再びデータ(メール開封率、イベント参加申し込み数、寄付率など)で測定し、効果があったかを確認します。
この「仮説立て→アクション→検証」のサイクルを繰り返すことで、データに基づいた、より効果的なサポーター活性化策を見つけていくことができます。
まとめ:まずは一つの「分析視点」から始めてみましょう
データ活用と聞くと難しく感じるかもしれませんが、まずは手元にあるデータから、今回ご紹介したような一つの「分析視点」を選んで分析を始めてみることをお勧めします。
- まずは簡単なデータから: 会員情報と寄付履歴など、比較的整理しやすいデータから始めましょう。
- 具体的な「問い」を持つ: 「このデータを見たら、〇〇なことがわかるんじゃないか?」という具体的な問いを持って分析に臨むことが重要です。
- 完璧を目指さない: 最初から高度な分析を目指す必要はありません。まずは傾向を掴むことから始めましょう。
- 分析結果は「ヒント」: データ分析の結果は絶対的な答えではなく、サポーターの方々をより深く理解するための「ヒント」として捉えましょう。
サポーター活性化ラボでは、皆様のデータ活用を通じたコミュニティ活性化を応援しています。データからサポーターの方々の「声なき声」を読み解き、より良い関係性を築くための一歩を踏み出しましょう。