サポーターの『紹介』行動をデータで分析:コミュニティを広げるための実践ヒント
はじめに:サポーターによる「紹介」がコミュニティにもたらす価値
日頃から活動を応援してくださるサポーターの皆様は、団体にとってかけがえのない存在です。その中でも、さらに一歩進んで、ご自身の知人や友人に団体の活動を紹介し、新たなサポーターを連れてきてくださる方々は、コミュニティの拡大にとって非常に大きな力となります。
サポーターからの紹介で新たな応援者が増えることは、単に人数が増えるだけでなく、いくつかの重要なメリットをもたらします。紹介者は団体の活動をよく理解しているため、紹介される側も信頼感を持って関わることができます。これにより、紹介経由で参加された方は、最初から活動への関心が高く、その後の継続率やエンゲージメントが高い傾向にあることがよくあります。また、新規サポーター獲得にかかるコストを抑えることにも繋がります。
では、こうした貴重な「紹介行動」を、私たちの手元にあるデータからどのように読み解き、コミュニティをさらに広げていくための具体的なアクションに繋げることができるでしょうか。今回は、サポーターの「紹介」に関するデータを分析し、実践に活かすための方法をご紹介します。
「紹介行動」に関するデータをどう集めるか
まずは、どのようなデータがサポーターの「紹介」に関連するかを考えてみましょう。紹介行動そのものを直接記録することは難しい場合もありますが、間接的に示唆するデータや、意図的に収集できるデータがあります。
例えば、以下のようなデータが考えられます。
- 新規サポーター登録時の「知ったきっかけ」データ: Webサイトの登録フォームや、イベント参加時のアンケートなどで、「当団体の活動をどちらで知りましたか?」といった設問に「知人・家族の紹介」といった選択肢を設ける。
- イベント参加時の「同伴者」情報: イベント申込フォームで、「同伴者がいらっしゃいましたら、その方のお名前(あるいは既存サポーターか新規か)をご記入ください」といった項目を設ける。
- 特定の「紹介キャンペーン」の利用データ: 「ご友人をご紹介いただくと〇〇」といったキャンペーンを実施する際に、紹介用の特定のコードやリンク、または紹介者の名前を記入する仕組みを作る。
- サポーターへのアンケートでの設問: 既存サポーターに対し、「これまでに当団体の活動をどなたかに紹介したことはありますか?」または「今後、友人などに紹介したいと思いますか?」といった意向を尋ねる。
これらのデータは、既存のデータベースやスプレッドシート、アンケートツールなどで管理されていることが多いでしょう。これらのデータを集約し、分析可能な形に整理することから始めます。
分析ステップ1:紹介行動を起こしやすいサポーターの特定
データが集まったら、まず「どのようなサポーターが紹介行動を起こしやすいか」を分析してみましょう。この分析の目的は、将来的に紹介をお願いしたい、あるいは紹介行動を促したいサポーター層や個人の特徴を理解することです。
例えば、以下の切り口でデータを集計・比較してみます(Excelなどで実施可能です)。
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紹介行動の有無でサポーターをグループ分けする:
- 過去に「紹介経由の新規サポーター」を生み出したサポーター(紹介者)
- 紹介行動は確認されていないが、他の行動(寄付、イベント参加、ボランティアなど)で活発なサポーター
- その他のサポーター
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各グループの他のデータ項目を比較する:
- 継続期間: 紹介行動を起こすサポーターは、応援期間が長い傾向があるか?
- 寄付履歴: 定期的な寄付者か、高額寄付者か、単発寄付者か?
- 活動への参加頻度・種類: イベント、ボランティア、ワークショップなど、様々な活動に積極的に参加しているか?特定の活動への参加が多いか?
- 情報接触度: ニュースレターの開封率・クリック率が高いか?Webサイトを頻繁に見ているか?
- 居住地域、年代、性別など(もしデータがあれば): 特定の属性に偏りがあるか?
こうした比較を通じて、「応援期間が長く、かつ複数の活動に積極的に参加しているサポーターの中から、紹介行動が生まれやすい傾向がある」「特に〇〇に関する情報に関心が高い方が、紹介行動を起こしやすいようだ」といった傾向が見えてくることがあります。
分析ステップ2:紹介経由で増えた新規サポーターの特性理解
次に、紹介を通じて団体を知り、サポーターになってくださった方々のデータを見てみましょう。この分析は、紹介が質の高いサポーター獲得に繋がっているか、そしてそうした方々に対してどのようなコミュニケーションやサポートが必要かを理解するために役立ちます。
以下の視点で分析を行います。
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紹介経由の新規サポーターと、その他の新規サポーターをグループ分けする:
- 知人・家族の紹介でサポーターになった方
- Webサイト検索、SNS広告、イベントなどでサポーターになった方
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両グループのその後の行動を比較する:
- 初期の行動: 登録直後に寄付をしたか?最初にどのようなイベントや活動に参加したか?
- 継続率: 登録から半年後、1年後の継続率は高いか?
- エンゲージメント: その後の寄付頻度・金額、イベント参加頻度、情報接触度(ニュースレター開封など)は高いか?
- 他のサポーターとの交流: イベントや活動で他のサポーターと交流する様子が見られるか(もしデータがあれば)。
分析の結果、「紹介経由のサポーターは、登録後3ヶ月以内の寄付率が他の新規サポーターより〇〇%高い」「紹介経由のサポーターは、最初の1年間で少なくとも1回はイベントに参加する割合が高い」といった具体的な事実が明らかになるかもしれません。
分析結果からアクションへ:紹介を促し、関係性を深めるには
分析で得られたインサイトは、具体的なサポーター活性化策やコミュニケーション戦略に活かすことができます。
アクション例1:紹介してくれそうなサポーターへのアプローチ
分析で特定された「紹介行動を起こしやすい」傾向を持つサポーター、あるいは既に紹介してくれた実績のあるサポーターに対し、特別なアプローチを検討します。
- 感謝の表明: 紹介してくれたサポーターには、感謝のメッセージを丁寧に伝える。これは、次の紹介行動へのモチベーションに繋がります。
- 情報提供の強化: 団体活動の最新情報や、紹介しやすいように活動の魅力や参加方法を分かりやすくまとめた資料(PDFなど)を提供する。
- 「紹介のお願い」を検討: 個別メッセージやサポーター向けのニュースレターなどで、「ぜひお知り合いにも活動をご紹介ください」といった形で、具体的に紹介をお願いしてみる。その際、紹介する側、される側の双方にメリットがある仕組み(例:初めてのイベント参加費割引など)を検討しても良いでしょう。
アクション例2:紹介しやすい「仕組み」や「機会」を作る
特定のサポーターへのアプローチだけでなく、サポーター全体が紹介しやすいような環境や機会を整備することも重要です。
- 紹介しやすいコンテンツの作成: 活動内容を分かりやすく解説した動画、活動報告チラシ、Webサイトの「応援方法」ページなどを、サポーターが簡単にシェアできる形式で用意する。
- 友人同伴参加を推奨するイベント企画: 「お友達と一緒に参加すると楽しい〇〇体験イベント」といった、新規の方が参加しやすい、かつ既存サポーターが誘いやすい企画を実施する。
- 紹介プログラムの導入: 紹介者と新規サポーターの双方に小さな特典を提供するなど、より意欲的に紹介を促す仕組みを検討する。
アクション例3:紹介経由の新規サポーターへのオンボーディング
紹介経由で入ったサポーターは、既に団体の活動に何らかの関心を持っている可能性が高いです。こうした方々がさらに深く関われるように、丁寧なフォローアップを行います。
- 歓迎メッセージ: 紹介で参加してくれたことへの感謝とともに、改めて団体の活動や参加方法を案内する特別なウェルカムメッセージを送る。
- 関心に合わせた情報提供: 登録時の情報や最初の行動から推測される関心分野に合わせて、関連するイベント情報や活動報告を提供する。
- 交流機会の提供: 同じ紹介者から入ったサポーター同士や、関心分野が近い他のサポーターとの交流の機会を設けることを検討する。
データ収集と分析の継続
サポーターの紹介行動に関するデータは、一度分析すれば終わりではありません。継続的にデータを収集し、定期的に分析を行うことで、施策の効果を測定したり、新たな傾向を発見したりすることができます。
分析結果に基づいて実施したコミュニケーションやキャンペーンが、実際に紹介行動の増加や、紹介経由の新規サポーターの定着率向上に繋がったかを検証し、次のアクションに活かしていくことが重要です。
まとめ
サポーターによる「紹介」は、コミュニティを自然な形で広げ、信頼に基づいた関係性を築くための強力な手段です。
手元にあるデータ、例えば「知ったきっかけ」「イベント同伴者」「紹介キャンペーン利用」といった情報や、アンケートで取得できる意向のデータを活用することで、どのようなサポーターが紹介行動を起こしやすいか、紹介経由の新規サポーターはどのような特性を持つかなどを分析することができます。
これらの分析結果は、紹介を促すための具体的なサポーターへのアプローチ、紹介しやすい仕組み作り、そして紹介で増えた新規サポーターへの効果的なオンボーディングといった実践的なアクションに繋がります。
データ分析を通じてサポーターの「紹介」の力を理解し、積極的に活かしていくことが、コミュニティの持続的な成長と活性化に繋がるでしょう。ぜひ、今回ご紹介したデータ分析の視点を、日々の活動に取り入れてみてください。