サポーター活性化ラボ

サポーターの「熱量」をデータで測る:エンゲージメント分析で関係性を深める実践ステップ

Tags: エンゲージメント, データ分析, サポーター活性化, コミュニティ運営, 関係構築

はじめに

「サポーターの皆さんの熱意をもっと引き出したい」「どうすればもっと積極的に活動に関わってもらえるだろうか」。日々の活動の中で、このように感じている非営利団体の担当者の方は多いのではないでしょうか。

多くの団体では、寄付履歴やイベント参加といったサポーターの行動データが蓄積されています。しかし、「これらのデータをどのように活用すれば、サポーター一人ひとりの熱量や、団体との関係性の深さを具体的に把握できるのだろうか?」と悩まれることもあるかもしれません。

本記事では、皆さんが手元にお持ちのデータを活用して、サポーターの「エンゲージメント(熱量)」を測定し、その分析結果を具体的なコミュニティ活性化のアクションへ繋げるための実践的なステップをご紹介します。

NPOにおける「エンゲージメント」とは何か?

非営利団体におけるサポーターのエンゲージメントとは、単に金銭的な支援(寄付)だけでなく、団体の活動に対する関心、参加、貢献意欲、そして積極的に関わろうとする姿勢の総体を指します。

具体的には、以下のような多様な行動が含まれます。

これらの行動は、サポーターが団体に対して持つ「熱量」や「関わりの深さ」を示す貴重なサインです。

なぜエンゲージメントをデータで測る必要があるのか?

サポーターのエンゲージメントをデータに基づいて把握することには、いくつかの重要なメリットがあります。

  1. 関係性の深さを客観的に評価できる: 漠然とした印象だけでなく、具体的な行動データに基づいてサポーターごとの関わりの深さを把握できます。
  2. 効果的なコミュニケーションが可能になる: エンゲージメントレベルに応じた、よりパーソナルで響くメッセージを送ることができます。例えば、エンゲージメントの高いサポーターには特別な情報を、低いサポーターには関心を引くきっかけを提供するといった戦略が立てられます。
  3. リソースを最適化できる: 限られたリソース(時間、予算、人員)を、より効果的なサポーターへのアプローチに集中させることができます。
  4. コミュニティ全体の活性化に繋がる: エンゲージメントの高いサポーターを特定し、その熱量をさらに引き出すことで、コミュニティ全体の雰囲気を高め、新たな貢献を引き出すきっかけを作ることができます。

どのようなデータを活用できるか?

皆さんの団体ですでに収集している可能性のあるデータで、エンゲージメント分析に活用できるものは多岐にわたります。

これらのデータは、多くの場合ExcelやCSVファイルとして書き出すことができるはずです。まずは、どのようなデータが手元にあるかを確認してみましょう。

エンゲージメント指標の設計と測定(実践ステップ1)

手元にあるデータを活用してエンゲージメントを測定するための一つの具体的なアプローチとして、「エンゲージメントスコア」を計算する方法があります。

1. エンゲージメントを構成する「行動要素」を定義する

まず、皆さんの団体において、どのようなサポーターの行動を「エンゲージメントが高い」と見なしたいかを具体的にリストアップします。これは団体の活動内容やミッションによって異なります。

2. 各行動要素に「スコア」を割り当てる

次に、リストアップした行動要素それぞれに、重要度に応じた「スコア」を割り当てます。スコアの付け方に絶対的な正解はありませんが、最初は単純な加点方式で始めるのがおすすめです。

これらのスコアは、団体の活動やサポーターとの関係性の中で、特に重視したい行動により高い点数を付けるように調整してください。最初は仮置きで構いません。

3. サポーターごとのエンゲージメントスコアを計算する

定義した行動要素とスコアを基に、サポーター一人ひとりについて、該当する行動のスコアを合計して「エンゲージメントスコア」を算出します。

多くのサポーター管理システムや、Excelの関数(SUMIFSなど)を活用することで、この合計スコアを計算できます。

このスコアが高いほど、団体とのエンゲージメントが高いサポーターであると見なすことができます。

エンゲージメントスコアの分析(実践ステップ2)

サポーターごとのエンゲージメントスコアが算出できたら、次にそのスコアを分析します。

1. スコアの全体像を把握する

2. エンゲージメントの高いサポーターの特徴を見つける

高エンゲージメント層に分類されたサポーターに共通する特徴をデータから探します。

これらの特徴を掴むことで、「どのような人が、どのようなきっかけで、どのように関わるとエンゲージメントが高まるのか」というインサイトを得ることができます。

分析結果をアクションへ繋げる(実践ステップ3)

分析で得られたインサイトや、エンゲージメントレベルでセグメント化されたサポーターに対して、具体的なアクションを計画・実行します。

1. エンゲージメントレベルに応じたコミュニケーション戦略

2. 高エンゲージメント層から学ぶインサイトの活用

高エンゲージメント層に共通する特徴や行動履歴から得られたインサイトを、コミュニティ全体の活性化に活かします。

分析とアクションの継続

エンゲージメント分析は一度行ったら終わりではありません。サポーターとの関係性は常に変化するため、定期的に(例えば四半期ごとや半期ごと)エンゲージメントスコアを算出し直し、分析とアクションを見直すことが重要です。

分析のサイクルを回すことで、施策の効果測定も行えます。「このコミュニケーション施策を実施した後、該当セグメントの平均エンゲージメントスコアはどう変化したか?」といった視点で評価することで、より効果的なサポーター活性化策を見つけていくことができます。

まとめ

サポーターの「熱量」や「エンゲージメント」は、コミュニティ活性化の鍵となる要素です。手元にある寄付履歴、イベント参加履歴、メールの反応データといった様々なデータを組み合わせることで、サポーター一人ひとりの関わりの深さを具体的に把握することができます。

本記事でご紹介した「エンゲージメントスコア」の計算と分析は、そのための実践的なアプローチの一つです。まずは、貴団体の活動における「エンゲージメントの高い行動」を定義し、簡単なスコアリングから始めてみてはいかがでしょうか。

データに基づいたエンゲージメントの理解は、サポーターとの関係性をより一層深め、コミュニティ全体の持続的な発展に繋がるはずです。ぜひ、小さな一歩からでも実践してみてください。