応援期間の「節目」で見えるサポーターの変化:データ分析で関係性深化のヒントを発見
サポーター活性化ラボでは、非営利団体がデータに基づき支援者コミュニティを活性化するための情報をお届けしています。
団体の活動を継続的に支えてくださるサポーターの存在は、私たちにとって非常に重要です。サポーターとの関係性をより深め、長く共に歩んでいくためには、一方的な情報発信だけでなく、サポーター一人ひとりの関わり方を理解し、彼らの変化に寄り添ったコミュニケーションや機会を提供することが求められます。
今回は、サポーターが団体を応援し始めてからの「期間」に注目したデータ分析の手法をご紹介します。応援期間という視点からサポーターの行動を読み解くことで、関係性維持や深化のための具体的なヒントを見つけることができるでしょう。
なぜ応援期間の「節目」に注目するのか?
サポーターのエンゲージメントや団体への期待は、応援を開始してからの時間の経過とともに変化する可能性があります。
- 応援を始めたばかりの頃は熱量が高いが、数ヶ月で関心が薄れてしまう方
- 最初はライトな関わりでも、時間の経過とともに深い関わりを持つようになる方
- 特定の節目(例:1年、3年、5年など)を境に行動や意識が変わる方
こうしたサポーターの「時間による変化」を捉えずに、一律のコミュニケーションを取っていると、関係性の維持・強化のチャンスを逃したり、潜在的な離脱リスクに気づけなかったりする可能性があります。
応援期間をいくつかの「節目」として区切り、その節目ごとにサポーターの行動データを分析することで、以下のようなインサイトを得ることができます。
- 応援開始後の初期段階で重要な行動や関わり方
- 特定の期間を過ぎると見られるエンゲージメントの傾向変化
- 節目を機に活動が停滞・減少するサポーターの特定
- 長期的に応援してくださるサポーターの共通する行動パターン
これらのインサイトは、サポーターのステージに合わせたよりパーソナルなコミュニケーションや、関係性深化を促す具体的なアクションプランを立てる上で非常に役立ちます。
応援期間「節目」分析の具体的なステップ
お手元にあるサポーターデータを使って、応援期間の節目分析を行う具体的なステップをご紹介します。Excelなどの表計算ソフトがあれば、基本的な分析は可能です。
ステップ1:必要なデータの準備
分析に必要な主なデータは以下の通りです。
- サポーターリスト: サポーターの名前やID、そして最も重要な「団体を応援し始めた日付(応援開始日)」が記録されているデータです。会員登録日、初回の寄付日、初めてイベントに参加した日など、団体にとって「応援開始」と定義できる日付を用意します。
- 活動履歴データ: 各サポーターの過去の活動に関するデータです。
- 寄付履歴(日付、金額)
- イベント参加履歴(日付、イベント名)
- ボランティア参加履歴(日付、活動内容)
- メール開封・クリック履歴(日付、メールタイトル、開封/クリックの有無)
- その他、サポーターの団体との関わりを示す様々なデータ
これらのデータを、サポーターIDなどで紐付けられるように準備します。
ステップ2:サポーターを応援期間でグループ分けする
サポーターリストに「応援開始日」があることを確認したら、現在から応援開始日までの期間(応援期間)を算出します。
- 例:「応援開始日」から今日までの日数を計算する。
- 例:「応援開始日」から経過した年数を計算する。
次に、算出した応援期間に基づいて、サポーターをいくつかのグループに分けます。どのような区切り方をするかは団体の活動やサポーター層によって異なりますが、以下のような例が考えられます。
- 例1:1年未満 / 1年〜3年未満 / 3年〜5年未満 / 5年以上
- 例2:6ヶ月未満 / 6ヶ月〜1年未満 / 1年〜2年未満 / 2年以上
団体の主要な継続期間や、これまでの経験から何らかの変化が起こりそうだと感じている節目(例:年会費の更新時期など)を考慮して区切りを設定すると良いでしょう。ExcelのFILTER関数やピボットテーブル機能を使えば、簡単にグループごとのリストを作成できます。
ステップ3:各期間グループの活動状況を集計・比較する
応援期間でグループ分けができたら、それぞれのグループについて、活動履歴データを集計し、傾向を比較します。
例えば、以下のような指標を集計してみましょう。
- 寄付関連: グループ内の平均寄付回数、平均年間寄付金額、継続寄付者の割合など
- イベント関連: イベント参加率、特定のイベントへの参加状況など
- コミュニケーション関連: ニュースレターの平均開封率・クリック率、アンケート回答率など
- ボランティア・その他: ボランティア参加経験者の割合、特定のプロジェクトへの関わりなど
これらの集計結果をグラフなどで可視化すると、期間グループ間での違いがより明確になります。
ステップ4:特定の「節目」前後の行動変化を追う(応用編)
より詳細な分析として、サポーター一人ひとり、あるいは特定のグループについて、設定した「節目」を迎える前と後で、行動がどのように変化したかを追うことも有効です。
例えば、「応援開始から1年を迎えるサポーター」のリストを作成し、節目となる日付の前後3ヶ月(期間は任意)で、メール開封率、ウェブサイト訪問頻度、ライトなイベントへの参加回数などがどう変化したかを比較します。
- 節目を境に活動が減っているサポーターはいないか?
- 節目を境に特定の活動(例:寄付ではなくイベント参加)が増えているサポーターはいないか?
この分析は少し手間がかかりますが、個別のサポーターの状態をより正確に把握するのに役立ちます。
分析結果から読み解くインサイトと具体的なアクション
分析結果から見えてきた各応援期間グループの傾向や、特定の節目での変化は、サポーターとの関係性強化のための重要なヒントになります。
インサイトの例とアクション
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インサイト1:応援期間が1年を超えると、ニュースレターの開封率が顕著に低下する傾向がある。
- 考えられる理由: 最初の熱意が落ち着いた、情報過多に感じている、ニーズが変わった。
- アクション: 1年以上のサポーター向けに、ニュースレターの内容や頻度を見直す。より深い活動報告や、彼らが「団体との関係性を続けたい」と思えるような特別な情報(長期サポーターへの感謝メッセージ、限定コンテンツなど)を盛り込むことを検討する。あるいは、メール以外のコミュニケーションチャネル(郵送DM、電話など)の有効性を検証する。
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インサイト2:応援開始から3年〜5年のサポーターは、寄付頻度は一定だが、イベント参加やボランティアへの関わりが少ない。
- 考えられる理由: 寄付という形での応援は定着したが、他の関わり方を知らない、または機会がないと感じている。
- アクション: 3年以上のサポーターに対し、寄付以外の様々な貢献方法(ボランティア、スキル提供、イベント企画協力など)について、具体的な情報を丁寧に伝える。彼らの経験やスキルを活かせるような、少し特別な参加機会を案内する。
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インサイト3:応援開始1年目の節目を過ぎたあたりから、一部のサポーターの活動が全体的に減少している。
- 考えられる理由: 最初の関心が薄れた、期待と違った、団体との接点が減った。
- アクション: 1年目の節目を迎える、あるいは迎えたばかりのサポーターを特定し、個別に連絡を取ることを検討する。活動状況に変化があったか、何か困っていることはないかなど、彼らの声に耳を傾ける機会を作る。彼らが再び関わりやすくなるような、敷居の低いイベントや活動参加の提案を行う。
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インサイト4:5年以上の長期サポーターは、イベント参加率やSNSでの情報発信など、活動へのエンゲージメントが非常に高い。
- 考えられる理由: 団体への信頼や共感が深く根付いている、コミュニティ内でのつながりを感じている。
- アクション: 長期サポーターに対し、日頃の感謝を最大限に伝える。彼らが持つ経験や知識を活かせるような、団体運営や活動企画への意見交換会、上級者向けのボランティア機会などを提供する。彼らを「サポーターのリーダー」として位置づけ、新規・中堅サポーターとの交流を促す役割をお願いすることも考えられる。
分析結果から見えてくるインサイトは団体によって様々です。重要なのは、データが示す傾向からサポーターの状況を想像し、「なぜそうなのか?」を考えることです。そして、その仮説に基づいた具体的なコミュニケーションや機会提供といったアクションを実行に移すことです。
分析を続ける上でのヒント
- 完璧を目指さない: 最初から全てのサポーターの全ての活動データを網羅して分析する必要はありません。まずは主要な活動データ(寄付、イベント参加など)と応援開始日という最も基本的なデータから始めてみましょう。
- 定期的な実施: サポーターの状況は常に変化します。一度分析したら終わりではなく、半年に一度、あるいは四半期に一度など、定期的に応援期間の節目分析を実施することで、変化の兆候を早期に捉えることができます。
- 他のデータと組み合わせる: 応援期間データと、他の属性データ(年齢、地域など)や行動データ(参加したイベントの種類、関心のあるプロジェクトなど)を組み合わせることで、より詳細なサポーター像が見えてきます。
まとめ
サポーターの「応援期間」をデータで区切り、その節目ごとの行動パターンやエンゲージメントの変化を分析することは、サポーター一人ひとりの状況をより深く理解し、関係性を維持・強化するための非常に有効なアプローチです。
お手元のサポーターリストにある「応援開始日」と活動履歴データがあれば、Excelなどの身近なツールで基本的な分析を始めることができます。まずはサポーターを応援期間でグループ分けし、それぞれのグループの主要な活動状況を集計・比較してみましょう。
分析結果から見えてきた各期間グループの傾向や、特定の節目での変化は、彼らのニーズや状態を理解するための重要なヒントです。これらのヒントに基づき、応援期間のステージに合わせたパーソナルなコミュニケーションや、関係性深化を促す具体的なアクションを実行することで、サポーターとのより強く、より長い関係性を築いていくことができるはずです。
ぜひ、サポーターの応援期間データに目を向け、彼らの時間による変化から関係性強化のヒントを発見してみてください。