サポーター活性化ラボ

サポーターのデータ『変化』を読み解く:関係性維持・深化のための分析視点と実践

Tags: データ分析, サポーターエンゲージメント, 関係性維持, 関係性深化, データ活用

はじめに:データが示すサポーターの「変化」にどう気づくか

日々のNPO活動において、多くのサポーターの方々が様々な形で応援してくださっています。寄付をしてくださる方、イベントに参加してくださる方、ニュースレターを読んでくださる方など、その関わり方は多様です。そして、サポーターとの関係性を深め、応援の輪を広げていくためには、こうした個々のサポーターの行動や関心の「変化」に気づくことが非常に重要になります。

しかし、「手元にたくさんのデータはあるけれど、具体的にどこを見ればいいのか」「変化と言われても、どうやってそれを捉えればいいのだろうか」と悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。単に過去のデータを見るだけでなく、「今、そしてこれから」のサポーターとの関係性をより良くしていくためには、データの静的な状態だけでなく、そこから生まれる「変化の兆候」を読み解く視点が欠かせません。

この記事では、サポーターのデータから「変化」を捉え、それを関係性の維持やさらなる深化につなげるための具体的な分析の視点と、すぐに実践できる方法についてご紹介します。

なぜサポーターの「変化」を捉えることが重要なのか

サポーターの行動や関心の「変化」を早期に、そして正確に捉えることには、いくつかの重要なメリットがあります。

「変化」を見るべきデータと分析の視点

では、具体的にどのようなデータに着目し、どのように「変化」を捉えれば良いのでしょうか。手元にある可能性のあるデータと、Excelなどの一般的なツールで実践できる基本的な分析視点をご紹介します。

注目すべきデータの種類

サポーターの「変化」は、様々なデータに現れます。

Excelでできる基本的な分析手法

これらのデータを「変化」という視点から分析するために、特別なツールは必ずしも必要ありません。お手持ちのExcelやスプレッドシートで十分実践可能です。

  1. 比較分析:

    • 最もシンプルですが効果的な方法です。例えば、各サポーターについて「2023年の総寄付額」と「2024年の総寄付額」を並べて、その差額や変化率を計算します。
    • 特定の指標(例: イベント参加回数、メール開封率)についても、期間を決めて(例: 半年前と比較、四半期ごと)同様に比較できます。
    • Excelの数式(=今年の数値 - 前年の数値=(今年の数値 - 前年の数値) / 前年の数値)で簡単に算出できます。
  2. 時系列分析(グラフ化):

    • サポーターごとの特定の行動データ(例: 月ごとの寄付額、四半期ごとのイベント参加回数)を時系列で並べ、折れ線グラフや棒グラフで可視化します。
    • グラフを見ることで、増加傾向にあるのか、減少傾向にあるのか、あるいは波があるのかなど、変化のパターンを視覚的に捉えることができます。Excelの「挿入」タブからグラフを作成できます。
  3. グループ分け(セグメンテーション):

    • 比較分析や時系列分析の結果に基づき、「寄付額が〇%以上減少したグループ」「イベント参加頻度が増加したグループ」「特定のWebページを繰り返し見ているグループ」のように、変化の傾向でサポーターをグループ分けします。
    • Excelのフィルター機能や、条件付き書式、またはピボットテーブルを使ってグループ分けや集計が可能です。
    • 例えば、「ピボットテーブル」機能を使えば、サポーターIDを行に、年を列に、寄付額を値に設定することで、各年の寄付額を一覧で表示し、変化を把握しやすくなります。
  4. 複数のデータソースの組み合わせ:

    • 可能であれば、複数のデータソースを組み合わせて分析することで、より深い洞察が得られます。
    • 例えば、「寄付額が減少しているが、Webサイトの特定の活動ページ閲覧が増えているサポーター」がいる場合、これは資金状況が変わったが、活動への関心自体はまだ高い、という可能性を示唆します。
    • ExcelでサポーターIDをキーとして、異なるシートやファイルからデータを結合・参照することで、複数のデータを一元的に見ることができます(例: VLOOKUP関数など)。

分析結果の解釈と具体的なアクションへの繋げ方

データの変化を捉えたら、次はその変化が何を意味するのかを解釈し、具体的なアクションに繋げます。

変化の解釈例

アクションを検討する際のポイント

実践のためのステップと注意点

サポーターのデータ「変化」分析を始めるための具体的なステップと、実践における注意点です。

  1. 分析の目的と対象を明確にする: 何のために変化を分析するのか(例:離脱防止、深い関わり促進)、どの期間の、どのデータを対象とするのかを決めます。
  2. 変化を追う主要指標を決める: 最初から全てのデータを見るのは大変です。まずは「寄付額」「イベント参加頻度」「メール開封率」など、重要と考える数個の指標に絞って始めましょう。
  3. 「変化あり」の基準を設定する: 例えば、「前年比で寄付額が30%以上減少」「直近半年間のイベント参加がゼロになった」など、どの程度の変化を「変化あり」と見なしてアラートとするか、目安を決めます。この基準は、団体の活動特性やデータ量に合わせて調整が必要です。
  4. 分析を定期的に行う: 一度きりではなく、四半期ごと、半期ごとなど、定期的に分析を実施する体制を整えます。
  5. 分析結果をアクションに繋げる体制を作る: 分析結果を個人で留めず、ファンドレイジング担当やイベント担当など、関係するチーム内で共有し、具体的なアクションプランを立て実行するプロセスを確立します。
  6. 個人情報保護に配慮する: サポーターのデータを扱う際は、プライバシーに十分配慮し、適切な管理体制のもとで分析・活用を行います。

まとめ:変化を捉え、サポーターとの「今」を大切に

サポーターのデータから「変化」を読み解くことは、関係性の維持・深化を目指す上で非常に有効なアプローチです。寄付額の増減、活動参加の頻度、コミュニケーションへの反応など、様々なデータに現れる微細な変化は、サポーターの今の関心や状況、そして今後の関わり方に関する重要なサインとなり得ます。

手元にあるExcelなどのツールでも、比較、時系列グラフ化、グループ分けといった基本的な手法で十分に実践可能です。分析で変化の兆候を捉えたら、その背景を推測し、サポーター一人ひとりに合わせた丁寧なコミュニケーションや関わり方の提案に繋げていくことが大切です。

全てのサポーターが同じペース、同じ形で応援し続けるわけではありません。データの「変化」を捉えることは、サポーターの方々の「今」の状態を理解し、より適切に寄り添うための第一歩となります。ぜひ、日々のデータに眠る「変化」のヒントを見つけ、サポーターとの関係性をさらに豊かなものにしていくためにご活用ください。