サポーターの「読まれ方」をデータ分析:コンテンツ接触から関心を知り、響く情報発信へ
なぜ、サポーターのコンテンツ接触データを分析する必要があるのか
非営利活動を応援してくださるサポーターとの関係性を深める上で、適切な情報を適切なタイミングで届けることは非常に重要です。多くの団体では、活動報告やイベント告知、寄付のお願いなど、様々な種類の情報発信を行っていることと思います。
Webサイトのアクセスデータ、ニュースレターの開封率やクリック率、SNS投稿への反応など、すでに皆さんの手元にはサポーターの「コンテンツ接触」に関するデータがあるかもしれません。しかし、「これらのデータが具体的に何を意味しているのか」「どうすればサポーターが本当に興味を持つ情報を届けられるのか」と悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
サポーターのコンテンツ接触データを分析することで、彼らがどのような情報に関心を持っているのか、どのような情報を求めているのかを知るヒントが得られます。このヒントを活かすことで、単に一方的に情報を発信するだけでなく、サポーター一人ひとりの関心に寄り添った、より「響く」コミュニケーションを実現し、関係性を一層深めることができるようになります。
コンテンツ接触データとは?分析で何がわかるのか
ここでいうコンテンツ接触データとは、サポーターが団体の情報にどのように触れているかを示すデータ全般を指します。具体的には以下のようなものが含まれます。
-
Webサイト関連データ:
- 特定の記事やページ(活動報告、プロジェクト紹介、募金ページ、イベント詳細、ブログなど)の閲覧数、滞在時間、離脱率
- Webサイト内での回遊経路
- 特定のリンク(例: 寄付ページへのボタン、イベント申込ボタン)のクリック率
- Google Analyticsなどで取得できる各種データ
-
メール(ニュースレター、個別メール)関連データ:
- メールの開封率
- メール内の各リンク(活動報告記事へのリンク、寄付ページへのリンクなど)のクリック率
- クリック後の遷移先での行動
-
SNS関連データ:
- 特定の投稿(活動報告、写真付きの現場レポート、イベント告知など)への「いいね」、コメント、シェアといった反応
- 投稿に含まれるリンクのクリック数
-
印刷物関連データ(工夫次第):
- ニュースレター(紙媒体)の同封物(アンケート、イベント案内など)への反応率(返送、Webでの回答など)
- 特定のチラシからのWebサイト訪問や問い合わせ数の変化(トラッキングコードや専用フォームの利用など)
これらのデータを分析することで、以下のような情報が見えてきます。
- サポーター全体として、最も関心が高いコンテンツの種類は何か?(例: 活動現場の様子、政策提言、イベント情報など)
- 特定のコンテンツに強く反応するサポーター層はどのような人たちか?(例: 寄付者、ボランティア経験者、特定のプロジェクトの支援者など)
- どのような情報をきっかけに、サポーターは次の行動(寄付、イベント参加、問い合わせなど)を起こすことが多いか?
- 期待していたほど関心を示されていないコンテンツはどれか? その原因は何か?
これらの分析結果は、今後の情報発信戦略やコミュニケーション計画を立てる上での貴重な根拠となります。
コンテンツ接触データを分析し、情報発信を最適化するステップ
データ分析に苦手意識がある方でも、手元にあるExcelやGoogle Analyticsなどのツールを使って実践できる基本的なステップをご紹介します。
ステップ1:分析の目的を明確にする
まず、「なぜこのデータを分析するのか」「分析から何を知りたいのか」を具体的に定義します。
- 例1:「ニュースレターの読者が、どの種類の情報に関心があるかを知り、次回のメール構成を改善したい」
- 例2:「Webサイトで特定の活動報告ページをよく見ているのは、どのような属性のサポーターが多いかを知り、その層に向けた別の情報提供を検討したい」
- 例3:「寄付をしたことのあるサポーターは、活動報告とイベント告知のどちらによく反応するかを知り、適切なコミュニケーションを使い分けたい」
目的が明確になると、収集すべきデータや分析方法が定まります。
ステップ2:必要なデータを収集し、整理する
ステップ1で定めた目的に沿って、関連するデータを集めます。WebサイトのデータはGoogle Analyticsから、メールデータは利用しているメール配信システムから、SNSデータは各プラットフォームのインサイト機能からダウンロードできることが多いです。
データが複数の場所に分散している場合は、ExcelやGoogle スプレッドシートなどに整理して集約します。この際、可能であればサポーターのIDやメールアドレスなど、個人を識別できる情報を紐づけておくと、後の「誰が何に反応したか」という詳細な分析が可能になります(個人情報の取り扱いには十分ご注意ください)。
ステップ3:データを分析する
収集・整理したデータを、目的に沿って分析します。
- コンテンツ種類別の集計: Webサイトの各ページ、メールの各リンクなどを「活動報告」「募金ページ」「イベント情報」「サポーターの声」などのカテゴリに分け、それぞれの閲覧数、平均滞在時間、クリック率などを集計・比較します。
- サポーター属性別の集計: サポーターの属性データ(例: 寄付有無、継続期間、年齢層など)とコンテンツ接触データを紐づけ、特定の属性のサポーターがどのコンテンツによく反応するかを集計します。
- 行動パターン分析: 特定のコンテンツに触れたサポーターが、その後にどのような行動(例: 別のページに遷移、問い合わせをする、寄付をするなど)をとるかを追跡します。Webサイト上であれば、Google Analyticsの行動フローレポートなどが役立ちます。
Excelを使う場合は、SUMIF関数やAVERAGEIF関数、ピボットテーブルなどが基本的な集計・分析に役立ちます。Google Analyticsであれば、行動レポートやユーザーエクスプローラーなどで様々な角度からのデータを確認できます。
ステップ4:分析結果を解釈し、インサイトを見つける
集計・分析した数値から、サポーターの関心や行動に関する「なぜ?」を考え、インサイトを見つけます。
- 「活動報告Aは閲覧数が多かったが、活動報告Bは少なかった。Bの内容はサポーターにとって関心が低かったのか、それとも見せ方に問題があったのか?」
- 「特定のイベント告知メールはクリック率が高かったが、申込には繋がりにくかった。告知内容は魅力的だったが、申込手続きが複雑だったのだろうか?」
- 「継続期間の長いサポーターは、現場の困難さを伝える記事によく反応する傾向がある。彼らは団体の『真実』を知りたいのかもしれない」
単に数値を見るだけでなく、サポーターの立場になって「なぜそうなるのか?」を深く考えることが重要です。他のデータ(アンケート結果、問い合わせ内容など)と照らし合わせることも有効です。
分析結果を活かした具体的なアクション
得られたインサイトは、今後の情報発信やサポーターとのコミュニケーションに直接活かすことができます。
- 情報発信の最適化:
- 関心が高いテーマのコンテンツを増やす、より分かりやすく伝える工夫をする。
- 関心が低いテーマは、別の伝え方を検討する(例: テキストから動画へ、専門的な内容を分かりやすい言葉で解説するなど)。
- 特定の関心を持つサポーター層に向けて、パーソナライズされた情報を提供する(例: 特定プロジェクトの支援者にはそのプロジェクトの続報を優先的に送る)。
- Webサイトの構成を見直し、よく読まれている記事や重要な情報にアクセスしやすくする。
- 新しいコンテンツや活動の企画:
- サポーターが求めている情報(Q&A、インタビュー、現場の裏側など)を基に、新しいブログ記事、動画コンテンツ、オンラインイベントなどを企画する。
- 特定のコンテンツへの反応が高いサポーター層を対象とした、限定的な交流会やワークショップなどを企画する。
- 関係性強化のための個別アプローチ:
- 特定の記事や活動に強い関心を示しているサポーターに対し、関連情報の提供や個別での声かけを検討する。
- 特定の種類の情報にしか反応しないサポーターに対して、他の活動への関心を広げるような情報提供の方法を工夫する。
これらのアクションは、単に一方的に情報を届けるのではなく、サポーターの関心やニーズに応える形でコミュニケーションを深めることにつながります。
分析を継続し、関係性強化のサイクルを作る
一度分析して終わりではなく、情報発信の効果を定期的にデータで確認し、分析結果を次のアクションに活かすサイクルを作ることが大切です。
- 改善策(例: ニュースレターの構成変更、Webサイトの表示改善など)を実施したら、その後のコンテンツ接触データがどのように変化したかを追跡・評価します。
- サポーターの関心は常に変化する可能性があります。定期的にデータを分析し、最新の傾向を把握するように努めましょう。
データ分析は、サポーターとの対話のきっかけを与えてくれます。数値の向こう側にあるサポーター一人ひとりの関心や想いに耳を傾ける姿勢が、持続的な関係性強化につながるでしょう。
まとめ
サポーターのコンテンツ接触データを分析することは、彼らの隠れた関心や求めている情報を知るための強力な手段です。Webサイトの閲覧履歴、メールの開封・クリックデータ、SNSの反応などを収集・整理し、コンテンツ種類別やサポーター属性別に分析することで、情報発信やコミュニケーション戦略を具体的に改善するヒントが見つかります。
分析で得られたインサイトに基づき、情報発信を最適化したり、新しいコンテンツや活動を企画したりすることで、サポーター一人ひとりの関心に寄り添った、より「響く」コミュニケーションが可能になります。データ分析を通じてサポーター理解を深め、彼らとの関係性を一層強化していくサイクルをぜひ作ってみてください。