過去の活動・キャンペーンをデータで検証:成果と次へのヒントを見つける方法
非営利団体の活動において、新しいキャンペーンやイベントを企画することは重要です。しかし、それらの取り組みが実際にどのような成果をもたらしたのかを十分に振り返る時間は、日々の業務に追われ確保しづらいかもしれません。手元にデータはあるものの、「これをどう使えば次の活動に役立てられるのだろうか」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
過去の活動やキャンペーンのデータを分析することは、単なる過去の評価にとどまらず、将来の活動をより効果的にするための貴重なヒントを与えてくれます。どのような活動がサポーターの皆様に響き、どのような行動に繋がったのかをデータに基づいて理解することで、限られたリソースを最も効果的な方法で活用できるようになります。
この記事では、過去の活動やキャンペーンのデータをどのように分析し、その結果をどのように次の企画や改善に繋げていくかについて、具体的なステップでご紹介します。
なぜ過去の活動データを分析する必要があるのか
キャンペーンやイベントを実施した後、「参加者は増えた」「寄付が集まった」といった短期的な結果は把握できます。しかし、その活動が長期的にどのような影響を与えたのか、例えば、
- 参加者のその後の継続的な関与(寄付、ボランティア参加など)に繋がったか?
- 新規サポーターの獲得にどれだけ貢献したか?
- 既存サポーターのエンゲージメント(関心度や活動への参加度)を高める効果があったか?
- 特定のメッセージや活動が、サポーター層のどのセグメントに特に響いたか?
といった、より深い影響を理解することは、今後の戦略立案において非常に重要です。データ分析は、これらの問いに客観的な根拠をもって答えるための方法です。成功要因を特定し、それを再現したり、うまくいかなかった点から学びを得て改善に繋げたりすることで、将来の活動の質を高めることができます。
分析に使えるデータとは
過去の活動・キャンペーンの効果検証には、主に以下のようなデータが活用できます。
- 参加者リスト: イベントや説明会、特定のキャンペーンへの参加者情報。
- 寄付データ: キャンペーン期間中の寄付者、寄付額、寄付の種別(単発、継続など)。
- 会員・サポーター情報: 参加者や寄付者の属性情報(年齢、居住地、会員歴など)。
- Webサイトデータ: キャンペーン関連ページの閲覧数、滞在時間、特定の行動(資料請求、登録など)。Google Analyticsなどのツールで確認できます。
- メール・SNSデータ: キャンペーン告知メールの開封率・クリック率、関連投稿への反応(いいね、シェア、コメント数)。
- アンケートデータ: キャンペーン参加者や関連層へのアンケート回答。
これらのデータは、スプレッドシート(Excelなど)で管理されていることが多いでしょう。まずは、検証したい活動に関連するデータを集め、一つに整理することから始めます。
効果検証のための具体的なステップ
過去の活動データを分析し、次へ繋げるための具体的なステップをご紹介します。ここでは、特定の「オンラインイベント」の効果を検証する例を考えながら進めてみましょう。
ステップ1:検証したい「目標」を明確にする
まず、その活動やキャンペーンが本来目指していたこと、あるいは今検証したいことを明確に定義します。
- 例:「オンラインイベント参加者のうち、イベント後半年以内に寄付した人の割合を知りたい」
- 例:「このキャンペーンが新規サポーターの獲得にどれだけ貢献したか測りたい」
- 例:「イベント告知メールのクリック率が高かった層の特徴を知りたい」
目標が定まると、必要なデータや分析方法がおのずと見えてきます。
ステップ2:関連データの収集と整理
設定した目標に基づき、必要なデータを集めます。オンラインイベントの例であれば、
- イベント参加者リスト(氏名、メールアドレス、可能であれば会員番号や属性情報)
- イベント後半年間の寄付データ(氏名、メールアドレス、寄付日、寄付額)
などを集めます。これらのデータを参加者をキー(例えばメールアドレス)として紐付け、一つのリストにまとめます。ExcelのVLOOKUP関数などが役立つでしょう。
ステップ3:分析手法の検討と実行
整理したデータを使って、目標達成度を測る分析を実行します。
- 単純集計: 参加者数、寄付者数、平均寄付額などを集計します。
- 比較分析: イベント参加者と非参加者で、その後の寄付率や平均寄付額に違いがあるか比較します。あるいは、特定の属性(例:〇〇市在住者)の参加率や寄付率を比較します。
- 時系列分析: イベント実施の前後で、特定の行動(例:Webサイトへのアクセス、資料請求)がどのように変化したかを見ます。
オンラインイベント参加者のその後の寄付率を知りたい場合であれば、「イベント参加者リスト」と「イベント後半年間の寄付データ」を紐付けたリストで、参加者のうち何人が寄付を行ったかを集計します。
例えば、イベント参加者100人のうち10人が半年以内に寄付をしていた場合、その後の寄付率は10%となります。可能であれば、同時期のイベント非参加者の寄付率と比較することで、イベント自体に寄付を促す効果があったかをより正確に評価できます。
ステップ4:分析結果の解釈
出てきた数値をただ見るだけでなく、「この数字が何を意味するのか」を考えます。
- 例:イベント参加者の寄付率が10%だった。これは高いのか低いのか? 過去の別のイベントや、非参加者の寄付率と比較してどうだろうか?
- 例:〇〇市在住者の参加率が特に高かった。なぜだろう? その地域の広報活動が効果的だったのか? イベント内容が地域の関心に合致していたのか?
- 例:イベント参加者の平均寄付額が、非参加者より高かった。イベントが寄付意欲を高めた可能性がある。
数字の背景にある要因を推測し、成功や課題の仮説を立てます。この解釈の段階で、関係者の意見交換なども行うと、より深い理解が得られます。
ステップ5:分析結果に基づいたアクションの検討
分析結果から得られた示唆を、具体的な次のアクションに繋げます。
- 成功要因の活用: イベント参加者の寄付率が高かった要因が、イベント中の具体的な活動報告にあったと仮説を立てた場合、今後の活動報告の方法やタイミングを改善したり、他の企画でも同様のアプローチを取り入れたりすることを検討します。
- 課題の改善: 特定の層への参加が少なかった場合、その層に向けた情報発信方法やイベント内容の見直しを検討します。
- 次の企画への示唆: イベント参加者のうち、特に活動歴の浅い層のその後の寄付が多かった場合、新規サポーター向けのイベント企画を強化したり、イベント参加後のフォローアップをより丁寧に行ったりすることを検討します。
このように、データ分析は「やりっぱなし」を防ぎ、次の活動の「打ち手」を考えるための重要なプロセスです。
まとめ
過去の活動やキャンペーンのデータを分析することは、組織の活動成果を客観的に把握し、将来の戦略を練る上で不可欠です。手元にある参加者リストや寄付データ、Webサイトのアクセス履歴などを活用することで、特別なツールを使わなくても実践的な分析を行うことができます。
今回ご紹介したステップ(目標設定、データ収集・整理、分析、解釈、アクション検討)を参考に、まずは小さくても良いので、一つの活動データから分析を始めてみてはいかがでしょうか。データから得られる気付きは、きっと皆様のサポーター活性化の取り組みを次のレベルへと引き上げる手助けとなるはずです。
サポーター活性化ラボでは、これからもデータ活用に関する実践的な情報をお届けしてまいります。