オフラインの「熱」をデータ化！イベントや活動の参加履歴を活用してサポーターとの関係性を深める
非営利団体の活動において、オンラインでのコミュニケーションだけでなく、イベント開催や説明会、街頭募金、ボランティア活動など、サポーターと直接顔を合わせるオフラインの機会は非常に重要です。これらの活動では、単に人数を集めるだけでなく、参加者の「熱意」や「関心」といった、オンラインでは捉えにくい貴重な情報を得ることができます。
しかし、これらのオフライン活動で得られたデータ（参加者リストやアンケート回答など）が、その後のサポーターとの関係性強化に十分に活かされていないケースも少なくありません。データはあるものの、他の情報とどう連携させ、どのようなアクションに繋げれば良いのか悩んでいる担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、オフライン活動で生まれたサポーターとの「接点」をデータとして捉え、それを既存のデータと組み合わせることで、より効果的に関係性を深めるためのヒントをご紹介します。
なぜオフライン活動のデータ活用が重要なのか
オフラインでの交流は、サポーターにとって団体をより身近に感じ、活動への理解を深める貴重な機会です。ここでは、オンライン上のテキストだけでは伝わりにくい「熱」や「想い」が生まれ、担当者とサポーターとの間に個人的な繋がりが生まれることもあります。
これらのオフライン活動で得られる情報をデータとして収集・分析することで、以下のようなメリットが得られます。
- サポーター像の多角的理解: オンラインでの行動履歴（Webサイト訪問、メール開封など）だけでは見えない、リアルな場での関心や行動を把握できます。
- エンゲージメントの可視化: どのサポーターが、どのようなオフライン活動に積極的に参加しているのかを知ることで、「熱意の高いサポーター」を特定しやすくなります。
- パーソナライズされたコミュニケーション: 特定のイベントに参加したサポーターに対して、そのイベント内容に関連した情報を提供したり、次のステップ（例えば、関連するボランティア活動や別のイベントへの案内）を提案したりすることが可能になります。
- 活動の効果測定と改善: どのオフライン活動が、その後の寄付や継続的な関与に繋がっているかをデータで検証し、今後の活動計画や予算配分に役立てることができます。
手元にあるオフライン活動の記録をデータとして整理し、既存のサポーター情報と組み合わせることから始めてみましょう。
どんなオフラインデータがあるか、どう収集・整理するか
オフライン活動で収集可能なデータは多岐にわたります。一般的なものとしては、以下のようなものが挙げられます。
- イベント・説明会参加者リスト: 参加者の氏名、連絡先、参加日などの基本情報。アンケートを実施していれば、参加理由や関心分野、団体への期待なども貴重なデータです。
- ボランティア活動記録: 参加ボランティアの氏名、参加日時、活動内容などの記録。活動頻度や継続期間も重要な指標になります。
- 街頭募金・キャンペーン: 募金者の人数、場所、日時などの集計データ。もし可能であれば（個人情報に配慮しつつ）、特に熱心に話を聞いてくれた方や特定の質問をした方の情報などを記録しておくことも考えられます。
- 交流会・意見交換会: 参加者リストに加え、話された内容や参加者の意見、関心事のメモなど。
これらのデータを活用するためには、まず「データ化」が必要です。多くの団体では、Excelやスプレッドシートで管理していることが多いかと思います。これらのデータを、既存のサポーターリストやCRM（顧客関係管理）ツールに登録されている情報と「紐付ける」ことが次の重要なステップです。
紐付けのキーとなるのは、氏名、メールアドレス、電話番号などの識別情報です。ただし、オフラインで収集した情報にはこれらの識別情報が不十分な場合や、オンライン上の情報と完全一致しない場合もあります。可能な範囲で情報を補完したり、複数の情報源を照合したりして、同一人物のデータであると特定する精度を高める工夫が必要です。最初から完璧を目指すのではなく、まずは収集可能な範囲でデータ化を進めることが現実的です。
具体的な分析ステップとアクションへの繋げ方
手元にあるオフラインデータを収集・整理し、既存データと紐付けたら、いよいよ分析です。ここでは、特別なツールを使わなくても、Excelなどの表計算ソフトで実践できる基本的な分析ステップと、そこから導き出されるアクションをご紹介します。
ステップ1：データの収集と統合
オフラインで収集したデータをデジタル化し、氏名や連絡先などの共通する情報をもとに、既存のサポーターデータベース（寄付履歴、メール開封履歴、Webサイト訪問履歴などが記録されているもの）と統合します。
例えば、Excelの場合、参加者リストとサポーターリストをVLOOKUP関数などで照合し、参加者の行に「〇〇イベント参加」といったフラグや参加日を追記していくイメージです。CRMを利用している場合は、インポート機能などを活用して、各サポーターの活動履歴にオフラインでの参加記録を追加します。
ステップ2：データを見る（分析）
統合したデータを使って、以下のような視点でデータを見てみましょう。
- 特定のオフライン活動参加者の特徴:
- 例：「〇〇イベントに参加したサポーターは、参加前にすでに寄付経験がある人が多かったのか、それとも初めて寄付した人が多かったのか？」
- 例：「ボランティア活動に複数回参加しているサポーターは、どのような属性（年代、地域など）が多いのか？」
- 例：「街頭募金で関心を示した人は、メールマガジンに登録している人が多いか？」
- オフライン活動参加とその後の行動:
- 例：「〇〇説明会に参加した人は、参加後に寄付をしてくれる割合が他のサポーターより高いか？」
- 例：「初めてボランティアに参加した人は、その後、寄付や別の活動に参加する傾向があるか？」
- 例：「特定のオフラインイベント参加者は、Webサイトの特定のページ（例えば、寄付ページや別イベントの案内ページ）を閲覧する傾向が強まるか？」
これらの分析は、Excelのピボットテーブル機能や簡単なフィルタリング、COUNTIF/SUMIF関数などで行うことができます。
ステップ3：データから読み解く（解釈）
分析結果から、どのようなインサイトが得られるかを考えます。
- 「〇〇イベントへの参加は、新規サポーターが継続的な寄付者になるための重要なステップになっているかもしれない。」
- 「ボランティアとして活躍しているサポーターは、特定の地域に集中しており、そこでの対面コミュニケーションを強化することが有効かもしれない。」
- 「街頭募金で関心を示した人には、メールだけでなく、より個別性の高いアプローチ（例えば、団体のパンフレット郵送や電話でのフォローアップ）が効果的かもしれない。」
データはあくまで過去の傾向や現在の状況を示唆するものです。なぜそのような結果になったのか、背景にある理由を推測し、仮説を立てることが重要です。
分析結果を具体的なアクションに繋げる
分析結果から得られたインサイトや仮説に基づき、サポーターとの関係性深化に繋がる具体的なアクションを企画・実行します。
アクション1：参加者へのパーソナライズされたフォローアップ
特定のオフライン活動に参加したサポーターのリストを作成し、参加内容に合わせたフォローアップを行います。
- イベント参加者へのフォロー:
- イベント参加のお礼とともに、イベントの内容に沿ったさらに詳しい情報や、関連する別の活動への誘い（例：「イベントでご紹介したボランティア活動はこちらです」「関連するテーマのオンラインセミナーがあります」など）。
- イベントで出た質問や関心事に関連するQ&Aや記事をまとめた情報の提供。
- ボランティア参加者へのフォロー:
- 活動への感謝を伝えつつ、他の活動への参加案内や、ボランティア経験者の声を紹介するコンテンツの共有。
アクション2：オフライン活動の効果測定と改善
データ分析を通じて、どのオフライン活動がサポーターのエンゲージメント向上や寄付に繋がりやすいかを把握します。
- 効果の高かった活動は、開催頻度を増やしたり、規模を拡大したりすることを検討します。
- 効果が限定的だった活動については、内容や告知方法、フォローアッププロセスを見直すためのヒントを得ます。
アクション3：オンラインとオフラインの連携強化
オフラインでの「熱」をオンラインでの活動に繋げ、あるいはオンラインでの関心をオフラインでの交流に繋げるための施策を検討します。
- オフラインイベント参加者に対し、団体のSNSアカウントフォローやメールマガジン登録を改めて推奨する。
- オンライン上で特定のコンテンツ（例えば、貧困問題に関する記事）をよく閲覧しているサポーターに対して、関連するテーマのオフラインイベント（例えば、講演会やスタディツアー）への招待を行う。
実践上のポイントと注意点
- プライバシーへの配慮: サポーターの個人情報を取り扱う際は、プライバシーポリシーを遵守し、情報の管理には十分注意してください。データを活用することの目的やメリットをサポーターに透明性をもって伝えることも大切です。
- 完璧を目指さない: 最初からすべてのオフラインデータを完璧に収集・統合することは難しいかもしれません。まずは、特定のイベント参加者データなど、手元にあるデータから小さく始めてみましょう。
- 継続すること: データ分析とそれに基づくアクションは一度きりではなく、継続的に行うことで、より深い洞察が得られ、関係性強化の効果も高まります。
- 現場の感覚との組み合わせ: データはあくまで現状を理解するための一つのツールです。現場でのサポーターとの直接の交流で得られる感覚や意見も大切にし、データ分析の結果と組み合わせて総合的に判断することが重要です。
まとめ
イベントや説明会、ボランティア活動など、オフラインの場で生まれるサポーターとの繋がりは、団体にとってかけがえのない財産です。これらの活動で得られた「熱」や「情報」をデータとして丁寧に収集・整理し、既存のオンラインデータと組み合わせて分析することで、サポーター一人ひとりの関心や行動をより深く理解することができます。
データから導き出されたインサイトをもとに、パーソナライズされたフォローアップや、オンライン・オフラインを連携させたコミュニケーション戦略を実行することで、サポーターとの関係性はさらに深まり、コミュニティ全体の活性化に繋がっていくでしょう。
手元にあるオフライン活動の記録を見直し、データ活用の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。