データ活用の第一歩:サポーターをセグメント化して支援の輪を広げる方法
データはあるのに活かせない?そんな悩みを解決する「セグメンテーション」の基本
非営利団体の活動を支えてくださるサポーターの皆様。日々、貴重なご寄付やボランティア、イベント参加など、様々な形で関わってくださっています。サポーターの方々の情報はデータベースに蓄積されているものの、「このデータをどう活かしたらいいか分からない」「個別のアプローチをしたいけれど、時間もリソースもない」と感じている担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
全員に同じ情報を提供したり、同じお願いをしたりしていませんか? 実は、少しのデータ活用で、サポーター一人ひとりの関わり方に合わせた、より効果的なコミュニケーションが可能になります。その第一歩となるのが「セグメンテーション」、つまりサポーターをいくつかのグループに分けて理解することです。
本記事では、お手元にあるデータを使ってサポーターをセグメント化し、それぞれのグループに合わせた活性化策を考えるための基本的なアプローチをご紹介します。
なぜサポーターをセグメント化する必要があるのか?
セグメンテーションとは、特定の基準に基づいて対象を複数のグループに分ける分析手法です。マーケティング分野でよく用いられますが、非営利団体におけるサポーターとの関係性強化にも非常に有効です。
なぜなら、サポーターの方々は、団体との出会い方、関わり始めた時期、寄付の頻度や金額、参加するイベントの種類など、様々な違いを持っているからです。これらの違いを無視して一律のアプローチをしてしまうと、メッセージが響かなかったり、求めている情報ではなかったり、というミスマッチが起こりやすくなります。
サポーターをセグメント化することで、それぞれのグループが持つ特徴やニーズが見えてきます。これにより、
- よりパーソナルなメッセージを届けられる
- 関心に合わせた情報を提供できる
- 適切なタイミングでアクションを促せる
- 限られたリソースを効果的に配分できる
といったメリットが生まれ、結果としてサポーターの皆様との関係性が深まり、コミュニティ全体の活性化に繋がるのです。
どのようなデータでセグメント化できるか?
特別なツールや高度な知識がなくても、お手元にある以下のデータから始めることができます。
- 寄付に関するデータ:
- 最終寄付日:最後にいつ寄付してくれたか
- 寄付回数:過去に何回寄付してくれたか
- 累計寄付金額:これまでに合計いくら寄付してくれたか
- 一口あたりの寄付金額:平均的な寄付額はいくらか
- 活動参加に関するデータ:
- イベント参加履歴:どのようなイベントに参加したか、参加回数は?
- ボランティア活動履歴:どのような活動に参加したか、頻度は?
- プロジェクト支援履歴:特定のキャンペーンやプロジェクトに寄付したか?
- コミュニケーションに関するデータ:
- メール開封率、クリック率:情報に関心を持ってくれているか?
- ウェブサイト訪問履歴:どのようなページを見ているか? (Google Analyticsなどの利用経験があれば)
- 基本的な属性データ:
- 年代、居住地域、団体との出会い方(イベント、ウェブサイト、紹介など)
これらのデータは、多くの場合、サポーター管理システムや寄付データベース、あるいはExcelファイルなどで管理されているはずです。
実践!データを使ったセグメンテーションのステップ
ここでは、お手持ちのデータを使って、実際にサポーターをセグメント化する具体的なステップをご紹介します。Excelを使った基本的な集計と分類を想定しています。
ステップ1:分析に必要なデータを準備する
まずは、サポーターごとに、セグメント化に利用したいデータを一つの表にまとめます。例えば、以下のような列を持つ表を作成します。
| サポーターID | 氏名 | 最終寄付日 | 寄付回数 | 累計寄付金額 | イベント参加回数 | メール開封率 | ... | | :----------- | :--- | :--------- | :------- | :----------- | :--------------- | :--------- | :-- | | 001 | 田中 様 | 2023/10/01 | 5回 | 50,000円 | 3回 | 60% | ... | | 002 | 佐藤 様 | 2024/01/15 | 1回 | 3,000円 | 0回 | 80% | ... | | 003 | 山田 様 | 2022/05/20 | 10回 | 200,000円 | 5回 | 40% | ... | | ... | ... | ... | ... | ... | ... | ... | ... |
ステップ2:セグメンテーションの基準を決める
どのような基準でサポーターをグループ分けするかを決めます。まずはシンプルに、寄付に関するデータを使った「RFM分析」から始めるのがおすすめです。
RFM分析とは? * R (Recency): 最終購入日(最終寄付日)からの期間。最近関わってくれた人ほど、現在も関心が高いと推測できます。 * F (Frequency): 購入頻度(寄付回数)。何度も関わってくれる人は、団体へのロイヤリティが高いかもしれません。 * M (Monetary): 購入金額(累計寄付金額)。多額の支援をしてくれる方は、団体にとって重要な存在です。
これらの指標でサポーターをランク付けし、組み合わせることでグループを作成します。例えば、
- Rの基準: 最近1年以内 / 1年以上3年以内 / 3年以上前
- Fの基準: 5回以上 / 2〜4回 / 1回
- Mの基準: 累計10万円以上 / 3万円〜10万円未満 / 3万円未満
といった形で、団体の実情に合わせて基準を設定します。基準は厳密である必要はありません。まずは「これくらいの期間が経つと関心が薄れるかな」「これくらいの回数寄付してくれる人はコアなファンかも」といった感覚で設定し、後から見直していくことができます。
RFMに加えて、「イベント参加回数」や「ボランティア経験の有無」といった活動参加に関する基準を組み合わせるのも効果的です。
ステップ3:サポーターをセグメントに分類する
ステップ2で決めた基準に基づき、サポーター一人ひとりがどのグループに属するかを分類します。Excelであれば、IF関数などを使って自動で分類することも可能です。
分類例:
- 優良サポーター: R, F, M すべてが高い(例: 最近1年以内に5回以上、累計10万円以上寄付し、イベントにも複数回参加している)
- リピートサポーター: Rは高いがMは中程度、Fは比較的高い(例: 最近1年以内に複数回寄付しているが、累計金額はそれほど高くない)
- 新規サポーター: Rは高いがF, Mは低い(例: 最近初めて寄付してくれたばかり)
- 休眠サポーター: Rが低い(例: 3年以上寄付や活動参加がない)
- イベント参加者(未寄付): 寄付履歴はないが、イベントには参加したことがある
- ウェブサイト登録者: 情報は登録してくれたが、まだ寄付や活動参加はない
これもあくまで一例です。団体の活動内容や目的に合わせて、独自のセグメントを定義してください。例えば、「ボランティア参加経験者」「特定のプロジェクト支援者」なども有効なセグメントになり得ます。
ステップ4:各セグメントの特徴を理解する
分類ができたら、各セグメントに属するサポーターの人数や、それぞれの属性、行動パターンなどを集計し、特徴を把握します。
- どのセグメントが最も人数が多いか?
- どのセグメントが累計寄付金額に最も貢献しているか?
- 新規サポーターはどのような経路で団体を知ることが多いか?
- 休眠サポーターになるのは、関わり始めてから平均どのくらいの期間が経った後か?
これらの特徴を理解することで、それぞれのグループに合わせたアプローチを考えるヒントが得られます。
分析結果を活性化アクションに繋げる
セグメントごとの特徴が理解できたら、いよいよ具体的な活性化策を考えます。重要なのは、「それぞれのセグメントにとって、どのような情報や機会が最も響くか」を想像することです。
以下に、セグメント別のアプローチ例をご紹介します。
- 優良サポーター:
- 丁寧な感謝のメッセージを送る。
- 活動のより深い部分や、 impact を実感できる特別な報告会へ招待する。
- 団体の長期的なビジョンや、継続的な支援の重要性について伝える。
- 他のサポーターとの交流機会を提供する。
- リピートサポーター:
- 継続的な支援への感謝を伝えつつ、なぜ継続が力になるのかを具体的に伝える。
- ステップアップした関わり方(例えばマンスリーサポーターへの移行や、イベントでのボランティア参加など)を提案する。
- 関心がありそうな特定のプロジェクトに関する情報を提供する。
- 新規サポーター:
- 改めて歓迎と感謝のメッセージを送る。
- 団体についてより深く知ってもらうための情報を分かりやすく提供する(団体の理念、活動内容の詳細、資金の使い道など)。
- ハードルの低い関わり方(ニュースレター登録、SNSフォロー、小規模イベントへの参加など)を案内する。
- 個別相談の機会などを設ける。
- 休眠サポーター:
- シンプルに「お元気ですか?」といった近況伺いのメッセージを送る。
- 過去に関心を持ってくれていた活動分野に関する最新情報を提供する。
- 特別なキャンペーンや、久々の関わりを歓迎するメッセージを送る。
- なぜ関心が離れてしまったのか、アンケートなどで意見を聞く機会を設ける(強制ではなく任意で)。
- イベント参加者(未寄付):
- イベント参加への感謝を伝え、イベントで伝えきれなかった活動の詳細や参加者の声などを共有する。
- イベントに関連する活動への支援(寄付)や、他のイベントへの参加を案内する。
- 小口からの寄付のハードルを下げる情報を提供する。
このように、セグメントごとにメッセージやアプローチ方法を変えることで、サポーターの心に届きやすくなり、次のアクションに繋がりやすくなります。
セグメンテーション実践のヒント
- 完璧を目指さない: 最初から細かく分けすぎず、3〜5個程度の大きなセグメントから始めてみましょう。
- 団体の実情に合わせる: 他の団体が行っている分類が、必ずしもあなたの団体に合うとは限りません。自団体のサポーターの特徴をよく観察し、最適な分け方を模索してください。
- 行動に基づいた分類を重視: 年齢や性別といった属性情報よりも、「どのような行動(寄付、参加、開封など)をとったか」に基づいた分類の方が、具体的なアクションに繋がりやすい傾向があります。
- 定期的に見直す: サポーターの状況は変化します。セグメンテーションの結果や基準は、定期的に見直して更新することが重要です。
- 分析は目的ではない: セグメンテーション自体がゴールではなく、その結果を基に「どのようにサポーターと関係を築くか」「どのような活動を共に行うか」を考えるための手段であることを忘れないでください。
まとめ
サポーターをセグメント化することは、データ活用の一歩として非常に有効な手段です。お手元にあるデータを整理し、シンプルな基準でグループ分けを行うことから始めてみてください。
それぞれのセグメントの特徴を理解し、そこに合わせたコミュニケーションや関わりの機会を提供することで、サポーターの皆様は「自分は大切にされている」「自分の関心に合った情報がもらえる」と感じやすくなります。これが、サポーターとの関係性を深め、支援の輪をさらに広げていくための鍵となります。
最初は難しく感じるかもしれませんが、まずはできる範囲で試してみることが大切です。小さな一歩から、サポーターとのより良い関係構築を目指しましょう。