新規サポーターの「最初のステップ」をデータで読み解き、関係性を育む方法
新規サポーターの「最初のステップ」をデータで読み解き、関係性を育む方法
非営利団体にとって、新しいサポーターとの出会いは大きな喜びです。しかし、それ以上に大切なのは、その新しい関係性をいかに育み、長期的な応援へと繋げていくかではないでしょうか。多くの団体で、新規サポーターリストは手元にあるものの、「その後の関わり方」「どうすればもっと深く関わってもらえるのか」といった点で悩まれているという声を耳にします。
実は、この「最初のステップ」には、関係性を育むためのヒントが詰まっています。そして、そのヒントを見つけ出す鍵となるのが、手元にあるデータを読み解くことです。今回は、新規サポーターの初期のデータから彼らの関心や傾向を理解し、関係性構築に繋げるための具体的なデータ活用方法をご紹介します。
なぜ新規サポーターの初期データ分析が重要なのか?
新規サポーターは、皆さまの活動に興味を持ち、最初の一歩を踏み出してくださった方々です。この初期段階での関わり方が、その後の関係性の深まりや継続的な応援に大きく影響します。
例えば、 * どのようなきっかけで団体を知ったのか * 最初の接点(寄付、イベント参加、会員登録など)は何か * その後の最初の数ヶ月で、どのような行動(メール開封、ウェブサイト訪問、SNSでの反応など)をとったか
といったデータは、彼らが団体に対してどのような関心を持っているのか、どのようなコミュニケーションを望んでいるのかを示唆しています。これらのデータを分析することで、よりパーソナルで効果的なコミュニケーションが可能になり、サポーターとの関係性を強化し、結果的に定着率やエンゲージメントの向上に繋げることができます。
分析に必要なデータと準備
まずは、新規サポーターに関するどのようなデータが手元にあるかを確認しましょう。一般的に、以下のようなデータが活用できます。
- 新規登録/参加情報:
- 登録/参加日(最初の接点となった日)
- 登録/参加の種類(寄付、会員登録、イベント参加、ボランティア登録など)
- 寄付金額、会員種別など
- 登録経路(ウェブサイト、イベント会場、紹介など)
- 特定のキャンペーンからの流入か
- 初期の行動データ(最初の数週間〜数ヶ月):
- 団体からのメールの開封/クリック状況
- ウェブサイトの訪問履歴(特定のページ閲覧など)
- SNSでの反応(いいね、シェア、コメントなど)
- 他のアクションの有無(追加寄付、別のイベント参加、問い合わせなど)
これらのデータが異なるシステム(寄付管理システム、メール配信システム、ウェブサイト分析ツールなど)に分散している場合が多いかと思います。分析のためには、これらのデータを一つの場所に集約し、新規サポーターごとに紐づける作業が必要です。最初はExcelファイルにリストアップすることから始めてみましょう。各サポーターの氏名(またはID)、最初の接点となった日、最初の行動の種類、そしてその後の追跡期間中の主な行動を記録していくイメージです。
具体的な分析手順(Excelでのアプローチ)
複雑なツールを使わずとも、手元のExcelデータである程度の傾向を掴むことができます。
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新規サポーターのリスト作成:
- 特定の期間(例:過去1年間)で新規に登録/参加したサポーターのリストを作成します。
- リストには、サポーターID、最初の接点の日付、最初の行動の種類(例: 〇〇キャンペーンへの寄付、△△イベント参加)を含めます。
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追跡期間中の行動記録の追加:
- 最初の接点から一定期間(例:3ヶ月間)を追跡期間と定めます。
- 追跡期間中にサポーターがとった特定の行動(例: メール開封数、ウェブサイト訪問の有無、別の寄付やイベント参加など)を集計し、リストに追加します。
- 例えば、「最初の3ヶ月間にメールを3通以上開封したか(はい/いいえ)」、「最初の3ヶ月間に追加の寄付をしたか(はい/いいえ)」といったフラグ情報を加えると分析しやすくなります。
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初期行動別の傾向集計:
- 「最初の行動の種類」や「登録経路」ごとに、その後の追跡期間中の行動の割合を集計します。
- 例1: 「〇〇キャンペーン経由で寄付をした新規サポーター」は、「ウェブサイトから一般寄付をした新規サポーター」と比べて、最初の3ヶ月間のメール開封率が高いか、追加寄付をする割合が高いか?
- 例2: 「△△イベントに参加した新規サポーター」は、「メルマガ登録だけをした新規サポーター」と比べて、その後のウェブサイト訪問頻度が高いか、次のイベントへの参加意向を示しやすいか?
- Excelのピボットテーブル機能を使うと、このような集計が効率的に行えます。
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初期エンゲージメントの簡易的な定義とセグメント化:
- 追跡期間中の行動データから、「初期エンゲージメントが高い」サポーターの条件を簡易的に定義してみます(例:「最初の3ヶ月でメールを複数回開封し、かつウェブサイトを再訪問した」サポーターなど)。
- この定義に基づき、新規サポーターを「初期エンゲージメント高」「中」「低」などのグループにセグメント化してみましょう。
分析結果の解釈と具体的なアクションへの展開
集計結果から見えてきた傾向を基に、具体的なアクションを検討します。
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特定の初期行動や経路からのサポーターの傾向:
- もし「〇〇キャンペーン経由のサポーターは、その後の活動参加率が高い」という傾向が見られた場合:
- 〇〇キャンペーン参加者向けに、活動参加を促す情報を早期に提供する。
- 〇〇キャンペーンの成功要因を分析し、他の新規獲得チャネルにも活かす。
- もし「△△イベント参加者は、その後のメール開封率が低い」という傾向が見られた場合:
- △△イベント参加者向けに、メール以外の方法(SNS、郵送物など)でのコミュニケーションを試す。
- イベント後のフォローメールの内容やタイミングを見直し、開封したくなるような工夫をする。
- もし「〇〇キャンペーン経由のサポーターは、その後の活動参加率が高い」という傾向が見られた場合:
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初期エンゲージメントのレベルに応じたアプローチ:
- 「初期エンゲージメントが高い」と定義されたサポーター:
- 既に団体に関心が高い層なので、より深い関わり(例:ボランティア募集、特定プロジェクトへの寄付呼びかけ、サポーター限定イベント案内)を促す情報を提供する。
- 感謝の気持ちを伝えるコミュニケーションを強化する。
- 「初期エンゲージメントが低い」と定義されたサポーター:
- まだ団体の活動内容を十分に理解していない可能性があります。活動の成果やサポーターの声など、基本的な情報を分かりやすく伝えるコミュニケーションを続ける。
- 関心のありそうな分野に特化した情報提供を試みる(登録時の情報などから推測)。
- 「〇〇に関する簡単なアンケートにご協力ください」など、小さなアクションを促す仕掛けを用意する。
- 「初期エンゲージメントが高い」と定義されたサポーター:
まとめ
新規サポーターの「最初のステップ」に現れるデータは、彼らの関心や潜在的なエンゲージメントレベルを示唆する宝庫です。これらのデータを丁寧に読み解くことで、「新規サポーターにどう関われば良いか分からない」という課題に対する具体的なヒントが見えてきます。
まずは、手元にある新規サポーターのリストに、最初の行動とその後の数ヶ月間の簡単な行動データを付け加えることから始めてみてください。そして、最初の行動の種類や経路ごとに、その後の行動に違いがあるかをExcelで集計してみましょう。そこから見えてくる小さな傾向が、よりパーソナルで効果的なコミュニケーション戦略を考える上での重要な一歩となります。
データ分析は、難解な統計やツールだけではありません。皆さまが日々向き合っているサポーター一人ひとりの「最初のステップ」に寄り添い、より良い関係性を築くための手がかりを一緒に探していくプロセスなのです。ぜひ、このデータ活用を通じて、新しいサポーターとの関係性をさらに豊かにしていってください。