新規サポーターの「最初の半年」をデータで分析:継続的な関係性を築くための実践ステップ
新規サポーターの「最初の半年」をデータで分析:継続的な関係性を築くための実践ステップ
非営利団体にとって、新規サポーターの獲得は活動を継続・拡大するために非常に重要です。しかし、獲得しただけで終わってしまっては、その後の関係性は深まらず、継続的な応援には繋がりにくいのが現実です。獲得にかかったコストに見合う、あるいはそれ以上の価値を生み出すためには、新規サポーターとの最初の関係構築が鍵となります。
特に、サポーターになっていただいた最初の半年間は、その後の応援活動のスタイルや継続意向を大きく左右する重要な期間と言えます。この期間にサポーターがどのような行動を取り、どのような情報に反応したのかをデータで把握することは、関係性を深め、コミュニティの一員として長く活躍していただくためのヒントに繋がります。
「手元に新規サポーターのデータはあるけれど、具体的にどう見ればいいか分からない」「どんな分析をすれば、その後のコミュニケーションに活かせるの?」と感じている担当者の方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、新規サポーターの「最初の半年」に焦点を当て、どのようなデータをどのように分析し、そこからどのようなアクションに繋げられるのかを具体的に解説します。
なぜ「最初の半年」のデータ分析が重要なのか
新規サポーターは、団体や活動への関心は持ってくださっていますが、まだ関係性は浅い状態です。この初期段階で団体との接点を増やし、活動への理解を深めていただくことが、その後の継続的な関わりや深いエンゲージメントに繋がります。
最初の半年間の行動や反応は、そのサポーターがどのような活動に関心があるのか、どのような情報収集の方法を好むのか、どの程度の頻度で団体と関わりたいと思っているのか、といったパーソナリティや応援スタイルを知るための貴重な情報源となります。この情報を分析し、一人ひとりに合ったアプローチを行うことで、サポーターは「自分は大切にされている」「団体との関係性を築けている」と感じやすくなり、結果として継続的な応援に繋がりやすくなるのです。
「最初の半年」で追うべきデータ項目
新規サポーターの「最初の半年」の行動を追うために、すでに皆さんの団体で収集している可能性のあるデータに焦点を当てます。特別なツールがなくても、Excelなどで集計・管理できる項目を中心に見ていきましょう。
- 基本情報: 氏名、サポーターになった日、住所、連絡先(メール、電話など)。(個人情報管理には十分ご注意ください。)
- 獲得チャネル: どのようにして団体を知り、サポーターになってくださったか(Webサイト経由、イベント参加、知人の紹介、広告など)。
- 初回の応援内容: 最初の寄付金額や種類(都度寄付、継続寄付)、最初のイベント参加、最初のボランティア参加など。
- その後の活動参加履歴: 初回以降、どのようなイベントに参加したか、ボランティア活動に参加したか、キャンペーンに応募したかなど。
- コミュニケーション履歴:
- メール: ニュースレターや個別メールの開封率、クリック率、返信の有無。
- DM/郵送物: 発送履歴、反応(応募、問い合わせなど)。
- 電話: 通話履歴、会話内容の記録。
- Webサイト: サポーター専用ページや特定の活動紹介ページの閲覧履歴、滞在時間。(Webサイト分析ツールがあればより詳細に把握できますが、なくても、特定のページへの誘導からの行動などで推測できることもあります。)
- SNS: 団体投稿への反応(「いいね」、コメント、シェア)履歴。(可能であれば)
- 問い合わせ履歴: 団体への質問、意見、要望などの内容と頻度。
これらのデータを、新規サポーターになった日を起点として半年間の期間で集計・整理します。例えば、サポーターごとに「半年間のイベント参加回数」「半年間のメール開封率の平均」「半年間で最も閲覧したWebサイトのページ」「半年間の問い合わせ回数」といった形で一覧表を作成すると、次の分析に進みやすくなります。
具体的な分析の切り口とアクションへの繋げ方
収集したデータを元に、新規サポーターの初期エンゲージメントを様々な角度から分析し、具体的なアクションへと繋げます。
分析1:初回の応援内容とその後の行動の関係性
見るべきデータ: 初回の応援内容、その後の活動参加履歴、コミュニケーション履歴。
分析例: * 「初回に〇〇プロジェクトに寄付してくださった方は、その後の△△イベントに参加する割合が高い」「△△イベントに参加された方は、その後のメールの開封率が高い」といった関連性を見つけます。 * 「初回に特定のイベントに参加された方は、その後のボランティア活動にはあまり参加しない傾向がある」といった傾向も把握します。
アクションへの繋げ方: * 初回行動との関連性が高い、次に関心を持ちそうな活動や情報を優先的に提供します。 * 例えば、特定のプロジェクトに寄付した方には、そのプロジェクトの進捗報告や関連イベントの案内を重点的に行います。 * 関連性が低い、あるいは全く新しい分野の活動を紹介する際は、丁寧に活動内容を説明したり、参加へのハードルを下げるような配慮を検討します。
分析2:エンゲージメント頻度によるグループ分け
見るべきデータ: 半年間での活動参加回数、メール開封・クリック頻度、Webサイト訪問回数、問い合わせ回数など。
分析例: * 半年間で複数回活動に参加したり、メールやWebサイトへのアクセスが多い「高エンゲージメント層」。 * 数回のメール開封やWebサイト訪問はあるが、活動参加は初回のみ、あるいは無しという「中エンゲージメント層」。 * ほとんどメールを開封せず、Webサイトへのアクセスや活動参加も無い「低エンゲージメント層」。
アクションへの繋げ方: * 高エンゲージメント層: 積極的に団体に関わってくださっている方々です。感謝の気持ちを丁寧に伝え、さらに深い関わり(例:コアな活動への参加、団体のアンバサダーとしての協力、企画段階への参加など)への可能性を打診します。彼らの声を活動に反映させる機会を設けることも有効です。 * 中エンゲージメント層: 関心はあるものの、まだ一歩踏み出せていない可能性があります。彼らが関心を示しそうな情報(閲覧したWebサイトのページ、クリックしたメールの内容などから推測)を丁寧に届けたり、短時間で参加できるイベントやオンライン企画など、参加しやすい機会を提案します。個別の声かけや、団体の他のサポーターとの交流機会を提供することも有効です。 * 低エンゲージメント層: 何らかの理由で、最初の関心から行動に繋がっていない、あるいは既に離脱の兆候があるかもしれません。過度な情報提供は避けつつ、団体の活動のハイライトや、簡単にできる応援方法などを、負担にならない頻度で送ります。簡単なアンケートで、今の状況(忙しい、関心が変化したなど)を尋ねてみることも有効ですが、返信がなくても気に病まないようにします。
分析3:特定のコンテンツへの関心度
見るべきデータ: メール内の特定のリンククリック、Webサイトの特定のページ閲覧履歴、アンケート回答内容、問い合わせ内容など。
分析例: * 環境問題に関するメールはよく開封・クリックするが、子どもの教育に関するメールには反応が薄い。 * 特定のプロジェクトに関するWebサイトのページを何度も閲覧している。 * ボランティア募集に関する問い合わせがあった。
アクションへの繋げ方: * サポーターの関心が高いテーマに関する情報を優先的に、より詳細に届けます。 * 関心分野に関する活動への参加を具体的に提案します。 * 関心があると推測される分野で、サポーターができること(寄付、ボランティア、SNSでの情報拡散など)を具体的に提示します。
分析4:早期離脱の兆候の発見
見るべきデータ: 半年間でのコミュニケーションへの無反応、Webサイトへのアクセス無し、活動参加無し、連絡先の不備など。
分析例: * 送っているメールが全く開封されない。 * Webサイトへのアクセス履歴が初回のみ。 * 電話をしても繋がらない、住所不明で郵送物が戻ってくる。
アクションへの繋げ方: * 低エンゲージメント層へのアプローチに加え、連絡方法を見直したり、他の連絡手段(電話番号や郵送先が分かれば、メール以外の方法も試すなど)で状況確認を試みます。 * 直接的な活動参加への誘いよりも、団体の最新のニュースやサポーターの声など、軽い関わりから始められる情報を提供します。 * 一定期間全く反応がない場合は、無理に引き止めようとせず、静かに見守ることも選択肢の一つです。ただし、その方が将来的に再び関心を持つ可能性もゼロではありませんので、連絡先を消去するのではなく、ステータスを「休眠予備軍」などと分けて管理し、情報提供の頻度を調整するなどの対応が考えられます。
データ分析を継続するために
新規サポーターの「最初の半年」のデータ分析は、一度行えば終わりではなく、継続的に行うことが重要です。
- 分析タイミングを決める: 例えば、新規サポーターになった日から3ヶ月後、そして6ヶ月後など、定期的にデータを集計・分析するタイミングを決めます。
- 分析項目を絞る: 最初から全てのデータを網羅しようとせず、まずは「初回の応援内容」「半年間の活動参加回数」「メール開封率」など、手元にあるデータで分析しやすい項目から始めます。
- 分析結果をチームで共有する: 分析で見えた傾向や、それに基づくアクションプランをチーム内で共有し、担当者全員で新規サポーターへの理解を深め、共通認識を持って対応にあたることが効果的です。
- アクションの効果を検証する: 分析結果に基づいて行ったコミュニケーションや企画が、その後のサポーターのエンゲージメントにどのような影響を与えたかを、再度データで検証します。
まとめ:データは関係性構築の羅針盤
新規サポーターの「最初の半年」は、その後の関係性を築く上で非常に重要な期間です。この期間のサポーターの行動や反応をデータで丁寧に追うことは、彼らの関心や応援スタイルを理解し、一人ひとりに合ったきめ細やかなコミュニケーションや活動提案を行うための強力なヒントとなります。
手元にあるデータを活用し、「初回の応援内容との関連」「エンゲージメント頻度」「コンテンツへの関心」「早期離脱の兆候」といった切り口で分析することで、サポーターをより深く理解し、彼らに「響く」アプローチを見つけることができます。
データ分析は難しいことだけではありません。まずは手元にあるExcelデータから、今回ご紹介したような簡単な集計や比較から始めてみてください。データは、サポーターとの関係性を深め、コミュニティを活性化させるための羅針盤となってくれるはずです。分析で見えたヒントを活かし、新規サポーターの皆さんと、より強く、より長い関係性を築いていきましょう。