サポーターの「応援疲れ」をデータで早期発見:関係性維持に繋がる分析と具体的なステップ
サポーターの「応援疲れ」にデータで気づく重要性
非営利団体の活動は、サポーターの方々の温かい応援によって支えられています。多くのサポーターは、活動への共感や信頼から継続的に応援してくださいますが、中には何らかの理由で以前ほど関われなくなったり、活動への熱意が少し冷めてしまったりする方もいらっしゃるかもしれません。私たちはこれを「応援疲れ」と呼んでいます。
サポーターの方々が「応援疲れ」を感じてしまう前に、その兆候に気づき、適切なコミュニケーションをとることが、関係性を維持し、さらに深めていく上で非常に重要です。しかし、個別に声をかけるのは難しく、どのように兆候を察知すれば良いか悩んでいる担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、サポーターの方々のこれまでのデータの中に、「応援疲れ」に繋がる可能性のある変化の兆候が隠されていることがあります。この変化を早期にデータで捉えることができれば、手遅れになる前に関係性をケアし、より良い関係性を再構築する機会を得られます。この記事では、お手元にあるデータを使って「応援疲れ」の兆候を早期発見するための分析の視点と、それに基づいた具体的なステップをご紹介します。
「応援疲れ」の兆候が表れるデータ項目
サポーターの方の応援に対するモチベーションや状況の変化は、さまざまなデータに表れる可能性があります。手元にあるデータを見渡してみてください。例えば、以下のようなデータ項目は、変化の兆候を捉えるヒントになるかもしれません。
- 活動への参加頻度:
- イベント(オンライン含む)への参加回数や頻度
- ボランティア活動への参加履歴
- プロジェクトへの参加履歴
- 情報接触:
- ニュースレター(メール・郵送)の開封率やクリック率
- Webサイトの訪問頻度、特定のページ(活動報告、寄付ページなど)の閲覧状況
- SNS投稿への反応(いいね、シェア、コメントなど)
- 寄付行動:
- 寄付の頻度や金額の変化(ただし、経済状況など別の要因も大きいため、他のデータとの組み合わせが重要です)
- 問い合わせ・コミュニケーション:
- 問い合わせの頻度や内容の変化
- アンケートへの回答頻度や内容の変化
これらのデータ項目自体に変化があったからといって、必ずしも「応援疲れ」であるとは断定できません。しかし、複数のデータ項目で同時に変化が見られたり、これまでのその方の行動パターンから大きく外れる変化が見られたりする場合は、注意深く見てみる価値があります。
兆候を早期発見するためのデータ分析の手順
お手元にあるExcelなどのツールを使って、これらのデータを分析し、「応援疲れ」の兆候を見つけるための具体的な手順を見ていきましょう。高度な統計知識は必要ありません。
ステップ1:対象期間と確認したいデータ項目を決める
まず、どの期間のデータを分析するか、そしてどのデータ項目に注目するかを決めます。例えば、「過去1年間のデータ」を対象に、「イベント参加履歴」「メール開封・クリック率」「Webサイト訪問頻度」の3つのデータ項目に注目する、といった形です。
ステップ2:サポーターごとの行動データを一覧化する
対象期間におけるサポーターごとのデータ項目を、一覧できる形に整理します。Excelであれば、サポーター名を1行とし、各列に「イベント参加回数」「メール開封率の平均」「Webサイト訪問回数」といった形で数値を入力していきます。過去のデータがあれば、その期間のデータも並べて比較できるようにしておくと良いでしょう。
ステップ3:過去の行動パターンとの比較や、変化率を計算する
整理したデータを見て、各サポーターの行動が以前と比べてどのように変化しているかを確認します。例えば、
- 以前はほぼ全てのイベントに参加していたのに、最近は全く参加しなくなった
- 毎週のニュースレターは必ず開いてクリックもしていたのに、最近は開封すらしなくなった
- 定期的にWebサイトで活動報告を読んでいたのに、訪問頻度が大きく減った
といった変化です。Excelの関数を使って、特定の期間(例:直近3ヶ月)の行動が、それ以前の期間(例:その前の3ヶ月または過去1年間)と比べて何%減少したか、といった変化率を計算するのも有効です。
ステップ4:複数のデータ項目での変化をチェックする
一つのデータ項目だけでなく、複数のデータ項目で同時に変化が見られないかを確認します。例えば、「イベント参加回数が減少し、かつメールの開封率も低下している」といったサポーターは、活動全体への関心が薄れている可能性が考えられます。一方で、「イベント参加は減ったが、Webサイトでの寄付に関するページ閲覧が増えている」といった場合は、関心の内容が変化しただけで、「応援疲れ」ではないかもしれません。複数の情報を組み合わせることで、より正確な状況判断ができます。
ステップ5:変化が見られたサポーターをリストアップする
分析の結果、過去のパターンから大きく外れる変化が見られたサポーターの方々をリストアップします。この時、変化の度合いや、複数のデータ項目で同時に変化が見られたかなどを考慮し、優先度をつけてリスト化すると、次に繋がるアクションが取りやすくなります。
分析結果に基づく具体的なアクション
変化の兆候が見られたサポーターのリストができたら、いよいよ具体的な関係性維持のアクションに移ります。
1. 個別のアプローチを検討する
リストアップしたサポーターの方々に対して、画一的ではない個別のアプローチを検討します。
- 状況の確認: 分析結果から推測される状況(例:最近イベントにご参加いただけていないようですが、何かお変わりないでしょうか?)を丁寧に問いかけるメッセージを送る。いきなり「応援疲れですか?」と聞くのではなく、「最近のご様子はいかがですか」といったやわらかな問いかけから始めるのが良いでしょう。
- 関心に合わせた情報提供: データから見られた特定の行動(例:過去に関心のあったプロジェクトのページの閲覧が減っている)に合わせて、そのプロジェクトに関する最新の情報を丁寧に届ける。
- 無理のない関わり方の提案: 例えば、リアルイベントへの参加が難しい状況が推測される場合、オンラインでの参加方法や、Webサイトでの情報収集、SNSでの応援など、無理なく続けられる関わり方を提案する。
- 感謝の伝達: これまでの応援に対する感謝を改めて伝える。データに基づき、「〇〇のイベントにご参加いただき、ありがとうございました」「以前、××についてご寄付いただいたこと、大変感謝しております」など、具体的なエピソードに触れると、より気持ちが伝わります。
2. 全体的な施策への示唆を得る
リストアップされたサポーターだけでなく、全体的に特定のデータ項目で関心の低下が見られる場合は、活動内容やコミュニケーション方法全体を見直すヒントになります。
- 活動内容・頻度の見直し: 特定の活動への参加が減っている方が多い場合、その活動の内容や開催頻度が今のサポーター層に合っているか検討する。
- コミュニケーションチャネルの多様化: メール開封率が低い方が多い場合、SNSや郵送、Webサイトなど、他のチャネルでの情報発信を強化する。
- 感謝を伝える機会の創出: 全体的に離脱傾向が見られる場合、日頃の感謝を伝える機会(サンクスレター、感謝イベントなど)が不足していないか見直す。
継続的なデータモニタリングの重要性
一度きりの分析で終わらせるのではなく、定期的にデータを確認し、サポーターの方々の行動の変化を継続的にモニタリングすることが重要です。四半期に一度、半年に一度など、団体にとって無理のない範囲で分析とアクションのサイクルを回すことをお勧めします。
まとめ
サポーターの「応援疲れ」の兆候は、お手元にあるデータの中に隠されていることがあります。イベント参加履歴、メール開封率、Webサイト閲覧履歴などのデータ項目を、過去のパターンと比較したり、複数の情報を組み合わせたりして分析することで、変化を早期に捉えることができます。
変化が見られたサポーターには、データに基づいた丁寧な個別のアプローチを試みてください。また、分析から得られた全体的な示唆は、今後の活動やコミュニケーション戦略の改善に繋げることができます。
データ分析はあくまでサポーターの方々への理解を深めるためのツールです。分析結果を活かし、一人ひとりのサポーターの方とより良い関係性を築いていくことが、非営利団体の持続的な活動、そしてコミュニティ全体の活性化へと繋がっていくと信じています。