データで知る失効・休眠サポーター:関係性を再構築するための分析と実践
はじめに:失効・休眠サポーターに注目する理由
日々の活動の中で、過去に団体を応援してくださっていた方々が、いつの間にか関わらなくなってしまった、という状況に心当たりはないでしょうか。こうした「失効」または「休眠」状態にあるサポーターの方々は、新規にサポーターを獲得するよりも、少ないコストで再び関係性を築ける可能性を秘めています。
これまで団体を応援してくださったという事実は、既に私たちの活動に対する理解や共感があることの証です。しかし、何らかの理由で一時的に距離ができてしまったのかもしれません。
手元にあるデータを活用することで、こうした失効・休眠サポーターの方々に再び関心を持っていただくためのヒントが見つかります。今回は、失効・休眠サポーターとは何かを定義し、どのようなデータを分析すれば良いのか、そしてその分析結果をどのように具体的な再活性化アクションに繋げていくのかについて解説します。
失効・休眠サポーターとは誰か?
まず、貴団体にとって「失効」または「休眠」状態にあるサポーターを定義することが重要です。この定義は、団体の活動内容やサポーターとの関わり方によって異なります。
例えば、
- 最終寄付日から1年以上経過している
- 会員有効期限が切れて更新していない
- 過去1年間、イベントやボランティア活動に一切参加していない
- 過去半年間、メールマガジンを開封していない、またはWebサイトを訪問していない
などが、定義の例として挙げられます。これらの定義を明確にすることで、データに基づいて対象となるサポーターを特定できるようになります。
ご自身の団体にとって、どのような状態になったら「休眠」と見なすかをチーム内で話し合い、共通認識を持つことから始めましょう。
データ分析で何を知るか
失効・休眠サポーターを特定したら、次にこれらの人々に関するデータを分析し、その背景にある可能性を探ります。どのような視点でデータを見ると良いのでしょうか。
1. 休眠サポーターの「傾向」を知る
特定の属性(年齢層、地域、職業など)のサポーターに休眠が多い傾向が見られるか、あるいは特定の獲得経路(Webサイト経由、イベント参加、友人からの紹介など)で獲得したサポーターが休眠しやすいかなど、共通点を探ります。
- 分析のヒント:
- 失効・休眠サポーターのリストを作成し、属性データを付与します。
- 全サポーターに占める各属性の割合と、休眠サポーターに占める各属性の割合を比較します。例えば、全体の20%が30代なのに、休眠サポーターの40%が30代であれば、この層が休眠しやすい傾向にある可能性が考えられます。
- Excelのピボットテーブル機能などが、こうした集計・比較に役立ちます。
2. 休眠前の「行動パターン」を知る
サポーターが休眠に至る前に、どのような行動の変化があったかを追います。例えば、寄付額や頻度の減少、イベント参加回数の減少、メールの開封率やクリック率の低下、Webサイト訪問頻度の低下などが挙げられます。
- 分析のヒント:
- 休眠サポーターそれぞれの、休眠前の一定期間(例: 最後のエンゲージメントから遡って1年間)の活動履歴やコミュニケーション履歴を時系列で追ってみます。
- 特定の種類のイベントへの参加が減った後に休眠する傾向があるか、特定の情報発信への反応がなくなったかなどを観察します。
- 過去のデータを遡って確認する作業になりますが、ここから休眠の「兆候」や「きっかけ」に関する仮説を立てることができます。
3. 休眠期間と「再活性化の可能性」を知る
休眠してからの期間が長いほど、再活性化は難しくなる傾向があります。休眠期間と、過去の再活性化キャンペーンへの反応率などのデータを照らし合わせることで、どのくらいの期間の休眠サポーターにアプローチするのが最も効率的かを見極めるヒントが得られます。
- 分析のヒント:
- 失効・休眠サポーターを休眠期間別にグループ分けします(例: 1年未満、1年〜3年未満、3年以上)。
- 過去に実施した再活性化のためのコミュニケーション(メール、DM、電話など)に対し、各休眠期間のグループがどの程度反応したか(寄付、イベント参加、問い合わせなど)を集計します。
分析結果に基づく実践的なアクション
データ分析から得られた洞察に基づき、具体的な再活性化アクションを計画・実行します。重要なのは、分析結果から見えてきた「傾向」や「可能性」に合わせて、アプローチを最適化することです。
セグメントに合わせたコミュニケーション
分析によって見えてきた休眠サポーターのセグメント(例: 特定の属性、休眠期間、休眠前の行動パターンなど)ごとに、メッセージやアプローチ方法を変えてみます。
- 休眠理由の仮説に基づいたメッセージ: 例えば、「最近イベントでお会いできていませんが、〇〇の活動が始まりました」や「以前ご関心のあった△△の分野で進捗がありました」のように、休眠前の関心や行動を踏まえたメッセージは、パーソナルな響きを持ちやすくなります。
- 関心を持ちそうな情報提供: 特定のプログラムや活動に関心の高かった方には、その分野の最新情報を提供します。
- シンプルな呼びかけ: 長期間休眠している方には、団体の近況報告と「またお会いできるのを楽しみにしています」といった、関係性の維持を目的としたメッセージを送ることから始めるのも良いでしょう。
- フィードバックを求める: 「最近あまり関われていない理由があれば教えていただけませんか?」といった問いかけを含む短いアンケートを送付することで、貴重な示唆を得られることがあります。回答しやすいよう、選択肢形式にしたり、匿名での回答を可能にしたりといった工夫が効果的です。
コミュニケーションチャネルの選択
分析結果から、特定の層に響きやすいチャネル(メール、DM、電話など)が見えてくることもあります。例えば、高齢のサポーターにはDMや電話の方が繋がりやすいかもしれません。
再び繋がる「機会」の提供
再活性化を目的とした、小規模な交流会や活動報告会、あるいはボランティア参加の呼びかけなど、再び団体との接点を持ってもらうための具体的な機会を提供することも有効です。これらの機会への参加者を、データ分析で特定した「再活性化の可能性が高い」層に絞って案内することも検討できます。
効果測定と継続的な改善
実施した再活性化アクションがどの程度効果があったのかを測定し、その結果を次のアクションに活かすことが重要です。
- どのようなメッセージやチャネルが、どのセグメントのサポーターに最も響いたのか?
- 再活性化に成功したサポーターは、その後どのような関わり方をしているか?
これらの問いに対する答えをデータから得ることで、再活性化のアプローチを継続的に改善していくことができます。
まとめ
失効・休眠サポーターは、多くの非営利団体にとって貴重な存在です。これらのサポーターに関するデータを丁寧に分析することで、なぜ距離ができてしまったのか、そしてどうすれば再び関係性を築けるのかについてのヒントを得ることができます。
分析結果に基づき、サポーター一人ひとりの過去の関わり方や傾向に合わせたきめ細やかなコミュニケーションや機会を提供することで、再び応援の輪に加わっていただく可能性を高めることができます。
手元にある会員データベースや活動履歴、コミュニケーション記録などのデータを見直すことから、失効・休眠サポーターとの関係性を再構築するための第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。