サポーターの寄付履歴を分析して、継続的な応援を育む方法
はじめに:なぜ、寄付履歴の分析が必要なのでしょうか
非営利団体にとって、活動を継続していく上でサポーターからのご寄付は非常に重要です。特に、単発のご寄付だけでなく、継続的に応援してくださるサポーターは、活動の安定的な支えとなります。
日々の業務の中で、ご寄付くださった方々への感謝の気持ちを伝えたり、活動報告を丁寧に行ったりすることはもちろん大切です。一方で、「この方はなぜ単発のご寄付だったのだろう」「どうすれば継続的に応援していただけるのだろう」といった疑問をお持ちになることもあるのではないでしょうか。
サポーターの皆様からいただいたご寄付の履歴データは、単なる記録としてだけでなく、サポーターとの関係性を深め、継続的な応援を育むための貴重なヒントを含んでいます。既に皆さんの手元にあるかもしれない寄付データ。これをどのように活用すれば、単発の支援者を継続的なサポーターに変え、関係性をより強固なものにできるのか。具体的なステップを通して考えていきましょう。
ステップ1:分析に必要なデータを準備する
まずは、分析に必要なデータを集め、整理します。 主なデータソースとしては、お使いの顧客管理システム、会計ソフト、あるいはExcelなどで管理している寄付者リストなどが考えられます。
最低限必要となるデータ項目は以下の通りです。
- 支援者ID(または氏名): 誰からのご寄付かを特定します。
- 寄付日: いつご寄付があったか。
- 寄付金額: いくらご寄付があったか。
- 寄付の種類(任意): 単発寄付、継続寄付(月額/年額)、プロジェクト指定寄付など、種類が分かればより詳細な分析が可能です。
これらのデータを一つの表にまとめます。複数のシステムにデータが分散している場合は、可能であれば一つのファイルに統合できると分析がしやすくなります。データの重複や表記ゆれ(例:同じ方の氏名が異なって登録されている)がないか、簡単に確認しておくと良いでしょう。
Excelをお使いであれば、各行が個別の寄付取引を表し、各列が上記のデータ項目となるような形式が分析に適しています。
ステップ2:分析の切り口を決める
データを準備したら、どのような視点で分析するかを決めます。今回の目的は「継続的な応援を育むこと」ですので、主に以下の切り口が考えられます。
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単発寄付者と継続寄付者の定義:
- 「単発寄付者」:これまでの寄付回数が1回のみのサポーター。
- 「継続寄付者」:これまでに複数回(例:2回以上)ご寄付くださっているサポーター、または現在継続寄付プランにご登録のサポーター。
- ※定義は団体の状況に合わせて調整してください。
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主な分析指標:
- 単発寄付者と継続寄付者の人数割合: 全体のサポーターの中で、それぞれの割合がどのくらいかを知る。
- 寄付回数の分布: 1回、2回、3回…と、それぞれ何人くらいのサポーターがいるか。
- 初回寄付からの期間: 初めてご寄付いただいてから現在までの期間。単発寄付者と継続寄付者で傾向に違いがあるか。
- 累計寄付金額: これまでの合計寄付額。
これらの切り口でデータを集計・比較することで、単発寄付で終わってしまうサポーターと、継続的に応援してくださるサポーターの間にどのような違いがあるのかが見えてくる可能性があります。
ステップ3:データを分析する(Excel活用例)
ステップ1で準備したデータを使い、ステップ2で決めた切り口で分析を進めます。ここでは、多くの団体でお使いのExcelを活用した簡単な分析方法をご紹介します。
例えば、「単発寄付者と継続寄付者の人数」を知りたい場合。
- 準備した寄付履歴データを開きます。
- 支援者ID(または氏名)をキーに、「寄付回数」を計算します。これは、支援者IDごとにデータの行数を数えることで求められます。(ExcelのCOUNTIF関数や、後述のピボットテーブルで集計可能です)
- 計算した寄付回数をもとに、「寄付回数1回」の人数と、「寄付回数2回以上」の人数を集計します。
より詳細な分析には、Excelのピボットテーブルが非常に役立ちます。
例えば、支援者IDごとの寄付回数や累計寄付金額を集計したい場合:
- 寄付履歴データの範囲を選択します。
- 「挿入」タブから「ピボットテーブル」を選択します。
- ピボットテーブルのフィールドリストで、
- 「行」に「支援者ID(または氏名)」をドラッグします。
- 「値」に「寄付日」をドラッグし、「データの個数」で集計すると、支援者ごとの寄付回数が分かります。
- 「値」に「寄付金額」をドラッグし、「合計」で集計すると、支援者ごとの累計寄付金額が分かります。
このピボットテーブルの結果を、寄付回数で並べ替えたり、フィルターをかけたりすることで、「寄付回数1回の支援者リスト」「寄付回数5回以上の支援者リスト」などを作成できます。
さらに、「寄付日」を「列」に追加してグループ化(年や四半期など)すると、時系列での寄付状況を見ることも可能です。
ステップ4:分析結果から示唆を得る
分析によって得られた数値やリストは、サポーターの行動を理解するための手がかりです。これらの結果をどのように解釈し、次のアクションに繋げるか。ここが最も重要なポイントです。
分析結果を見て、以下のような問いを立て、考えてみましょう。
- 単発寄付者の特徴:
- どのようなきっかけで寄付された方が多いか(もしデータがあれば)。
- 寄付された時期に特定の傾向はあるか。
- 初回寄付からどのくらいの期間が経過しているか。
- 他のサポーターとの属性に違いはあるか(もしデータがあれば)。
- 継続寄付者の特徴:
- どのようにして継続的な支援に至った方が多いか。
- 初回寄付から継続に至るまでの期間はどのくらいか。
- 特定のコミュニケーションやイベント参加などが継続に繋がっているか。
- 継続されている方は、どのような情報に関心を持っている傾向があるか。
データから直接的な原因が見えなくても、いくつかのグループに分けて特徴を比較することで、推測できることがあります。例えば、「ウェブサイト経由の単発寄付者は、メルマガ登録率が低い傾向がある」「イベント参加者は継続寄付に繋がりやすい」といった仮説が立てられるかもしれません。
重要なのは、「なぜ」そうなのかをデータから読み取ろうと努め、次のアクションのヒントを見つけ出すことです。
ステップ5:分析結果に基づいた具体的なアクション
分析から得られた示唆を基に、サポーターの継続的な応援を育むための具体的なコミュニケーションや施策を検討します。単発寄付者と継続寄付者では、必要としている情報や関心事が異なる場合が多いからです。
1. 単発寄付者へのアプローチ:
- 丁寧なサンクスコミュニケーション: 初回寄付への感謝を伝えつつ、ご寄付が具体的にどのように活動に役立てられているかを分かりやすく伝えます。「あなたの〇円のご寄付で、△△な活動が実現しました」といった具体的な報告は、次への関心を高めます。
- 団体の最新情報や活動の進捗を共有: メルマガやSNSなどを通じて、継続的に団体の「今」を伝えます。活動の魅力や団体のビジョンへの共感を深めてもらう機会を作ります。
- 継続寄付のメリットや選択肢の提示: 一定期間が経過した後など、適切なタイミングで継続寄付の選択肢があることをお知らせします。単発寄付と継続寄付の違い(例:毎月の少額でも、活動を安定的に支えられること)を具体的に伝えます。
- 次のアクションの提示: すぐに再寄付を依頼するのではなく、まずはメルマガ登録やイベント参加など、ハードルの低い関わり方を提示することも有効です。
2. 継続寄付者へのアプローチ:
- 深い感謝とリスペクトの表現: 継続的なご支援への深い感謝を定期的に伝えます。彼らが団体の活動にとって、いかに重要な存在であるかを誠実に伝えます。
- より詳細な活動報告や進捗の共有: サポーター限定の活動報告会や、ニュースレターでの詳細なレポートなど、継続サポーターだからこそ得られる特別な情報を提供します。
- 活動への参画機会の提供: ボランティア募集、意見交換会、特別なイベントへの招待など、単なる支援者としてだけでなく、活動を共にする仲間としての関わりを促します。
- 支援継続への労いと選択肢の確認: 長期間継続してくださっている方へ個別にメッセージを送ったり、継続プランの見直し(増額など)の選択肢をさりげなく提示したりすることも考えられます。
これらのアクションは、分析結果から見えてきた各グループの特徴や傾向に合わせてカスタマイズすることが重要です。すべての単発寄付者に同じメッセージを送るのではなく、初回寄付からの期間や金額によって内容を変える、といった工夫も効果を高めます。
まとめ
サポーターの寄付履歴データを分析することは、単に過去の記録を振り返るだけでなく、未来の関係性を築くための重要な一歩です。
- 手元にある寄付データを、誰が、いつ、いくら寄付してくれたかという視点で整理する。
- 単発寄付者と継続寄付者という切り口でデータを集計し、それぞれの特徴や傾向を比較する。
- 分析結果から見えてきた示唆を基に、なぜそうなのかを考え、仮説を立てる。
- その仮説に基づき、単発寄付者と継続寄付者それぞれに最適化されたコミュニケーションや施策を実行する。
データ分析は、決して難しい統計手法や高価なツールが必要なわけではありません。今回ご紹介したように、お使いのExcelでも十分に実践可能な分析はたくさんあります。
データは、サポーター一人ひとりの応援の証です。そのデータから得られるヒントを活かし、それぞれのサポーターとの関係性をより丁寧に見つめ直し、継続的な応援の輪を広げていくための第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。